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12月25日は伊藤誠と西園寺世界が死んだ日(アニメ『School Days』より) 『School days』を読もう! 【きょうのマンガ】

2015/12/25


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

12月25日は伊藤誠と西園寺世界が死んだ日。本日読むべきマンガは……。


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『School Days』第2巻
オーバーフロー(作) 酒月ほまれ(画) KADOKAWA ¥580+税


12月25日といえば、クリスマス。

キリスト生誕を祝うこの日は本来、家族そろって静かにすごすのをならわしとする。
しかし、高度に資本主義化した社会のなかでクリスマスはファミリー向けのプレゼント用商品を売りだす一大市場を形成し、その商売っ気にカトリック教会が懸念を示して久しい。

日本でも、1980年代初頭までクリスマスは子ども中心の家庭イベントで、お正月前のついでのようなものだった。
それがやがて若者同士の旅行や買いものなど消費行動を軸とするライフスタイルが各業界から提案されはじめ、存在感を増していく。
1983年に「anan」誌がクリスマスの朝をシティホテルのルームサービスとともに迎えよう、と特集記事を出したのを決定打に、バブル時代の少し前あたりから「クリスマスは恋人とキメる日」というテーマが台頭し、現在に至るしだいだ。

さて、本題である。

そんな“恋人たちのクリスマス”をさらに極端化させたものに、アニメ『School Days』(2007)がある。
原作はオーバーフローの同名アダルトゲーム。少年少女の三角関係がもつれて血まみれの惨劇で幕を閉じる怒涛の展開が、原作に勝るとも劣らないインパクトをもたらし話題になった。

アニメ版は、現実に起きた殺人事件とのかねあいで最終回が放送休止されたことでも有名である。
当日、差しかえ放送されたのは無難な紀行番組で、そのなかで海上を進むフェリーが映り、船の画像をみた海外のネットユーザーが「Nice boat.」とトボけた一言を書きこんでファンの間で流行り言葉になった。

けっきょく最終回は、のちにかろうじてAT-Xにおける夜間限定で放送にこぎつけた。
……のだが、フタをあけてみれば事件がなくても放送がどうなっていたかわからない内容だった。

欲望のおもむくまま周囲のさまざまな女子生徒と肉体関係をもった主人公・伊藤誠は本来の恋人である桂言葉(かつら・ことのは)を傷つけたことを悔やみ、仲を修復させる。
しかしその過程で、誠の恋の相談役であり浮気相手でもある少女・西園寺世界は誠の子を妊娠した状態であっさり捨てられる。

2人だけ幸せになるなんて酷い! と怒った世界は誠を包丁でメッタ刺しにして殺害。
誠と仲直りして気を持ち直した矢先だった言葉は急転直下の悲劇に精神が壊れてしまう。
言葉は復讐のため世界を呼び出し、ノコギリで喉首をバッサリ。さらに世界の腹を裂いて「中に誰もいませんよ」の名台詞を口にする。

ラストはヨットで海に出た言葉が誠の生首を大事そうに抱えて甲板に横たわる姿でしめくくられ……ってほんとに「Nice boat.」じゃん! と視聴者はのけぞるのだった。

この終盤の展開で、誠と言葉はクリスマスに浮かれる街を背景としてよりを戻している。
そして同じ日の夜に、誠が世界に、さらに世界は言葉に殺されるのだ。
マンガ版だと、最後の土壇場でアニメと違う展開になり、世界のほうが言葉を殺して誠を手中におさめるエンディングとなる。

宗教の祭日から離れ、家族愛の祝いからも離れ、恋人の性愛を煽ってお金を吸い上げる商業イベントとなったクリスマス。
そんな日に、恋がこじれてお金どころか命を奪われる若者たちを描いた物語をとおし、日本におけるクリスマスとは……と思いめぐらせてみるのもいいかもしれない。



<文・宮本直毅>
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』(総合科学出版)。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7

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