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『レベレーション(啓示)』第1巻 山岸凉子 【日刊マンガガイド】

2016/01/25


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『レベレーション(啓示)』


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『レベレーション(啓示)』第1巻
山岸凉子 講談社 ¥600+税
(2015年12月22日発売)


ジャンヌ・ダルク、この名を知らない人はいないだろう。

百年戦争において、農夫の娘ながら神の啓示を受けてフランス軍のためにイングランド軍と戦ったフランスの国民的ヒロインであり、「聖女」としても名高く、勇敢な女性の代名詞としても世界に広く知られている。
魔女裁判にかけられて火あぶりの刑に処せられ、19歳で死去とのドラマチックな人生も魅力的にうつる。

しかし、『レベレーション(啓示)』のジャンヌは、冒頭いきなり刑が執行される日の憔悴しきった姿で登場する。

物語はジャネットと呼ばれていた少女時代の彼女が神から受けた「啓示」そのものに焦点をあてて描かれていく。
しかし、その啓示は本物? いや、それよりも人を幸福にするものだったか? 帯の書かれた「戦争」に関する問いかけも、今この時、作品が世に出る意味を印象づける。

中世ヨーロッパの詳細な生活描写も興味深い。
著者は、代表作『日出処の天子』のように、大胆な解釈を交えた歴史ものの名手である。
今作は、それに加えて「主人公に明確な落ち度はなく、強いていえば自己主張を抑えこむ、ごく普通の女性であるがゆえに起きた残酷な末路」を描き、トラウマ作品として名高い『天人唐草』も想起させる。ちょっぴり勝気で愛らしいジャネットの破滅の気配におののきながらも、ページをめくる手が止まらない。

特に「啓示」のシーンに登場する、この世ならざる存在の描写には、読みながら思わず息を詰めてしまう。
神々しいが恐ろしく、空虚、禍々しさもあり、ジャネットが殉じたという信仰の危うさをも投げかける。

大御所ながらマンガ界の「異端」になることも辞さない創作意欲に圧倒されるが、続きを待つ前に描きおろしの「コバン日記」で和むのもお忘れなく。
この落差もまた、著者の持ち味なのである。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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