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『左門くんはサモナー』第1巻 沼駿 【日刊マンガガイド】

2016/02/08


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『左門くんはサモナー』


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『左門くんはサモナー』第1巻
沼駿 集英社 ¥400+税
(2016年1月4日発売)


このマンガをすすめるなら、ぼくは真っ先にこう言いたい。
ヒロインの女の子は、他人のゲロを素手でキャッチするくらい、天使だよ、と。

慈愛に満ちあふれすぎた仏のような少女・天使ヶ原桜(てしがわら・さくら)と、人の欲が大好きな少年・左門召介(さもん・しょうすけ)の価値観の違いを描いた作品だ。
悪魔を自分の都合で勝手に呼びだして使いっ走りさせる問題児、左門くんが物語の中心。
しかしそれ以上に、ヒロインである天使ヶ原さんの存在感がすごい。

彼女自身は「いい子になろう」という意識はまったくない。屈折した性格の左門くんに好意を抱くわけでもない。むしろつきまとわれて迷惑。
つっこみの言葉も「うるせぇーっ!」「嫌だよ!」と乱暴だったりする。

読み進めると、このくらいざっくばらんな方が、柔軟にいろいろなことを飲みこめるのがわかる。
生まじめに跳ねかえすというより、なんとなく相手の行動を受けいれる柳のしなりのような弾力性を持った心が、善良さを産み続けている。

振りまわされ体質を悪魔たちにまで心配され、つい左門くんに突っこんでしまって事件に巻きこまれる彼女。
それでも心折れない。それどころか左門くんがムキになっているのを見て「ちょっとかわいい」とまで思う。
「天使」という言葉がピタリとはまる、「最強」の女の子キャラだ。

左門くんはというと、意地悪さの権化のようなキャラクター。
優しい人間を偽善者と呼び、心底嫌う。欲深い人間が堕落していくのが好きで、天使ヶ原さんが「欲に負けた末醜い破滅」するのが見たいがために、彼女につきまとう。
たいへん厄介な性格で、力も強力。

そもそも、天使ヶ原さんが「いい人」なら、左門くんは「悪い人」なのか? という疑問がわく。
欲に忠実というのは、素直だ、とも言いかえられる。善悪は簡単に二分できるものではない。
左門くんとはどんな人物なのかがわかる時に、この作品のテーマが見えてきそうだ。

冒頭には「これは私が地獄に堕ちるまでの物語である!!」とある。
現時点では、どうやったら悪堕ちするのか、見当がつかない。
睡魔と食欲という、人間の天敵を左門くんに背負わされた彼女。
今はまだ、屈していない。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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