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『BIBLE OF BLACK』第3巻 果向浩平 【日刊マンガガイド】

2016/02/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『BIBLE OF BLACK』


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『BIBLE OF BLACK』第3巻
果向(はなお)浩平 小学館 ¥429+税
(2016年1月18日発売)


両親を殺された少年の復讐劇――とくればよくある物語だ。

しかし、少年の父親が極悪人で、親の仇が悪人に制裁を加えて、世間の快哉を受けているものだとしたら?

本作『BIBLE OF BLACK』は、これまでになかった視点での復讐劇を描いた作品である。

72名もの人間が殺害されている未解決事件――“審判者事件”。
共通するのは被害者が法の網をすり抜けた大物や犯罪者であることと、殺害方法が人間離れをしていること。 世間は“審判者”を正義の味方のようにもてはやすが、女刑事・藍媚(あいみ)はあくまでも犯罪者として “審判者”を追及する。
そして、“審判者”に強烈な憎悪を示す高校生・曠空象矢(むなし・しょうや)と出会う。

象矢の父親は、悪名高い企業グループの総裁で“審判者”に殺された。母親は、象矢を産んだあと命を絶った。
“審判者”への怒りにかられた象矢は、悪魔イブの“契約者”となって強靭な肉体と異能を手に入れた(表紙の右側が「転化」した象矢である)。
その力は「魂」をもとに発揮されるものだが、「魂」を使い切ると象矢は「死ぬよりひどいこと」になってしまうのである。

苛烈なリスクを背負いながらも、神ともいうべき“審判者”に、孤独な戦いを挑む象矢の姿は鮮烈である。

完結巻となった第3巻では、象矢は自分のパワーを上げるため、ある行動に出る。
そこで新たな“契約者”エリに出会い、ついには父親を殺した“審判者”とも遭遇する……と急展開を迎えるのである。新キャラも登場して「さぁ、これから」という流れでの完結は、ちょっと残念だったかな。

果向浩平は、「週刊少年サンデー」の月例賞「まんがカレッジ」に入選した「天使のつかい」で2007年にデビュー。長編作品では、みずから作りあげたハグルマと呼ばれる巨大メカと戦う人間・コドを主人公とした『青血のハグルマ』(全6巻)がある。本作や『青血のハグルマ』独特の切り口での物語づくりができる著者なので、次はどんな世界を見せてくれるのか期待したい。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「名探偵コナンMOOK 探偵女子」(小学館)にコラムを執筆。現在発売中の「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)にてミステリコミックの年間総括記事等を担当。また、「ミステリマガジン」(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。

単行本情報

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