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『弟の夫』第2巻 田亀源五郎 【日刊マンガガイド】

2016/02/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『弟の夫』


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『弟の夫』第2巻
田亀源五郎 双葉社 ¥620+税
(2016年1月12日発売)


昨年末、第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞するなど、マンガの枠を超えて話題を呼んでいる本作。ゲイアートの巨匠・田亀源五郎の初の一般誌連載作品である。

第1巻では、死んだ弟の結婚相手・マイクの出現に戸惑う弥一と、無邪気に喜ぶ娘・夏菜の対比を通して、「同性愛」を特別視することの滑稽さをキャッチーに描いてみせたが、最新第2巻では弥一の元妻(夏菜のママ)が登場。
うれしさを隠せない様子の夏菜に心を痛めながらも、「お母さんがいないからかわいそう 親がいないからかわいそう そんな考え方には俺は絶対に与(くみ)したくない」という弥一の言葉に、これはセクシャリティのみならず、家族のカタチを問う物語なのだ、と気づかされる。

また、後半では自分がゲイであることをだれにも言えずに悩んでいた少年(小学生!?)がマイクと弥一のもとを訪ねていくるエピソードも。
社会的にカミングアウトするか否かは、ゲイというよりは個人の問題だし、少なくとも本作はゲイリベレーションを声高に叫ぶようなものではないが、マイクに苦しい胸の内を打ち明けたあとの少年の晴れやかな顔を見ると、実際こうやってだれにも言えず苦しんでいる人は多いのだろうな……としみじみ。
ゲイにかぎらず、あらゆるマイノリティの人々が生きやすい世のなかになるべきだとせつに感じずにいられない。

ある擬似家族の穏やかな日常と、そのなかで起こる小さな波乱をあくまで淡々とあたたかな語り口で描く。
これからの時代のスタンダードとなりうる、まだまだ注目のホームドラマだ。

著者インタビューは、コチラコチラ!



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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