日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『おかあさんの扉5 なにそれ!?五歳児』

『おかあさんの扉5 なにそれ!?五歳児』
伊藤理佐 オレンジページ ￥838+税
（2016年2月2日発売）

「週刊文春」で連載中の1コママンガ『おんなの窓』や、女性向けマンガで知られる伊藤理佐の子育て4コマだ。

著者ご本人はバツイチ再婚、40歳の時に「おかあさん」になり、同じくバツイチですでに大きなお嬢さんがいる漫画家の吉田戦車氏が「おとうさん」（こちらは『まんが親』連載中）で、そんな2人の間に産まれた幼稚園児の愛娘「あーこちゃん」の挙動をリアルに描く。

年長になったあーこちゃんは、思いもよらないヘンな行動をするかと思えば、痛いほど真実をついた発言をすることもあり、まさに「なにそれ!?」な日々だ。
もう少し成長すると羞恥心を覚えたり空気を読んだりしてやらなくなりそうな行動も多く、一度きりの五歳児の世界を全力で生きているさまが見ていて飽きない。

エッセイらしい脱力系のタッチではあるが、1コマの情報量が多いが読みやすいことに驚く。
ベテラン作家の高度なマンガ技術のなせるわざだろう。

奥様向けのお料理雑誌「オレンジページ」での連載だけあって、著者お得意の下ネタはやや控えめだ。
しかし、子どもによくある「おしり」「おなら」系の言葉を発して楽しむ時期に突入した娘を観察しつつ、ひそやかに対抗心めいたものを燃やすコマは、異様な迫力に満ちている。
「おかあさん」をやっていても、にじみ出る本性……！

特筆すべきはベビーシッターの「エヌさん」の存在だ。同じく漫画家である西原理恵子氏からの紹介であーこちゃんの赤ちゃん時代から通っている人物だが、幼稚園や習いごとの送迎だけでなく、バザー用の手づくり布小物を丸投げしても対応してくれるなど、ものすごく頼もしい先輩ママさんである。
共働き夫婦には、これくらいのサポートがないとうまくまわらないよなあ……と、ふと少子化問題に思いをはせてしまったり。

いやいや、笑いながら読むのが一番いい。猫と暮らす生活も再び始まり、著者のもうひとつの十八番、酒豪ネタは夫婦で加速している。
娘のおもしろ行動や自分たちの親バカ度合いを酒のつまみにできるのって、なかなかぜいたくな宴席ですよ！

＜文・和智永 妙＞
「このマンガがすごい！」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。