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『鏡の前で会いましょう』第1巻 坂井恵理 【日刊マンガガイド】

2016/03/17


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『鏡の前で会いましょう』


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『鏡の前で会いましょう』第1巻
坂井恵理 講談社 ¥429+税
(2016年2月12日発売)


今、「人格入れかわりもの」が熱い。

ネタとしては非常に古典的である。まわりにばれそうになってドキドキ、相手の意外な一面を知ってびっくり! などのドタバタ劇が繰り広げられるのを、何度となく見た記憶があるはず。

しかし最近では、「容姿が人生に与える影響」を浮き彫りにする装置として使われるケースが増えてきている。

この『鏡の前で会いましょう』の主人公、29歳の雑貨ショップ店員「みょーこ」こと各務明子(かがみ・あきこ)は自他ともに認める「ブス」(不動明王似、つまりゴツいタイプ)であり、それを自覚したうえで人生を楽しんできた。
中学からの友人で、美人だが地味な公務員で人づきあいが下手な「まなちゃん」こと日下部愛美(くさかべ・まなみ)を誘って失恋のヤケ酒をした翌朝、お互いの体が入れかわってしまい……?

もともとセンスもよく積極的な明子は、まなちゃんの体でファッションもモテ期も存分に楽しむ。
しかしそれはつかの間、「美人って肩凝るわ~」と明子が本来の自分の魅力にあらためて気づき、めでたしめでたし……とはならないのが著者の鋭さだ。

客観的に見て、まなちゃんが入った自分の体はやはり醜く、明子が今まで謳歌してきたはずの恋愛も、「ブス」の呪いから逃れるためのてっとり早い妥協策だったのでは、と気づいてしまう。
明子が欲しかったものは美しい容姿によって手に入るのか、しかし、それは自分にとって本当に幸せなのか?

一方で、まなちゃんのほうが深刻かもしれない。過保護すぎる母親は、まなちゃんに理想の「娘」の檻にこもるのを無意識に強いていたかのよう。
明子の体になったことで、今まで避けて通ってきた「オンナ」の市場価値を丸裸にされて、追いつめられる様はなんとも残酷だ。

雑貨や服がかわいらしく、明子のキャラも手伝って雰囲気は明るいが、痛いところをついてくる。
コメディでも少女マンガ風ハッピーエンドでもない、アラサー女性の救済はどこに?

女性を「ブス」扱いしたことがある男性にも、ご一読いただきたい。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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