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『とんかつDJアゲ太郎』第6巻 イーピャオ(案) 小山ゆうじろう(画) 【日刊マンガガイド】

2016/04/29


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『とんかつDJアゲ太郎』


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『とんかつDJアゲ太郎』第6巻
イーピャオ(案) 小山ゆうじろう(画) 集英社 ¥580+税
(2016年4月4日発売)


「とんかつ屋」とクラブの「DJ」という、一見関わりがなさそうな(いや、よく考えてもなさそうだぞ)、2つの職業を結びつけ、正統派の少年マンガに仕立てあげたのが本作『とんかつDJアゲ太郎』である。

渋谷のとんかつ屋「しぶかつ」の3代目・勝又揚太郎は、なんとなく店の見習い修行をしていたのだが、ある日出前を届けたクラブで味わったことのない高揚感を覚える。
普通ならここで「とんかつ屋なんか辞めて、DJになりてえ!」となるのだろうが、揚太郎は違った。
「とんかつもフロアもアゲられるDJになりたい!」と、一念発起した揚太郎は、父親にイチからとんかつを教わる一方で、「とんかつDJアゲ太郎」としてDJデビューを果たす。

揚太郎は、伝説のDJビッグマスターフライに才能を見出され、その薫陶を受ける。
気鋭のDJ屋敷をライバルとして意識しつつ、渋谷の街の幼なじみに支えられ、DJ仲間と切磋琢磨しながら、DJとして腕を上げていく。

その一方で、揚太郎は、父・揚作を師と仰ぎ、上野の老舗「かつれつ 黒門」で修行を積んで、とんかつ屋としても一回り大きくなっていくのだ。
師匠、ライバル、仲間――という少年マンガにかかせないアイテムが、きちんとそろっている作品なのだ。

曲を瞬時に切り替えるDJのテクニックが、とんかつ屋の仕事を手早くこなす手際のよさにつながったり、キャベツを切るテンポやとんかつが揚がる音が、DJとしてのリズム感に結びついたり――と「DJ」と「とんかつ」が相乗効果をもって揚太郎をスキルアップさせていく。

揚太郎は、あくまでも「とんかつDJアゲ太郎」なのだ。「DJ」と「とんかつ屋」のどちらか一辺倒にはならない。
だからこそ、大バコで仲間たちとつくりあげた勝負曲(アンセム)を披露して人気を博しても、「このままDJでいくぜ!」とはならない。

最新刊の第6巻では、揚太郎は「東都とんかつ登録店組合」(略称・東とん登)の会合に出席したり、老舗のとんかつ屋の味を受け継ごうとしたり……と、とんかつ屋としての腕を上げるべく奮闘する。
こうした「とんかつ」と「DJ」のバランスのよさが本作のいいところなのだ。

平成も20年を過ぎて、昭和チックな「根性物語」を描こうとしたら、道具だてをここまで特異なものにしないと気恥ずかしくなっちゃうのかな――そう思えるほどに懐かしい味わいのあるストレートな少年マンガ。
4月からTVアニメの放送もスタート。コミックスでは想像するしかなかった、揚太郎のDJとしてのアゲっぷりを、アニメで実感することができるのだ。
ますます盛りあがる『とんかつDJアゲ太郎』。ぜひこの機会に手にとってほしい1冊である。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)で国内本格ミステリ座談会とミステリコミックの年間総括記事等を担当。また現在発売中の、「ミステリマガジン」5月号(早川書房)でミステリコミックレビューを担当。

単行本情報

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