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『喧嘩稼業』第6巻 木多康昭 【日刊マンガガイド】

2016/05/21


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『喧嘩稼業』


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『喧嘩稼業』第6巻
木多康昭 講談社 ¥565+税
(2016年4月6日発売)


「多種ある格闘技がルール無しで戦った時……スポーツではなく……目突き金的ありの『喧嘩』で戦った時、最強の格闘技は何か!?」

そんなテーマのもと、日本中のあらゆるジャンルの格闘家を集結させた究極の格闘技イベント、陰陽トーナメント。
前作にあたる『喧嘩商売』では、そのトーナメント開催直前というところで、半年の長期休載が決定した。

「週刊漫画家ってのはハードなお仕事だからね、ちょっとぐらいは休むべきだよね。トーナメントの組み合わせも発表されたし、それを見て今後の展開を予想しながら待ってようね」
……そう温かく見守ることを決意した読者たち。

そして、それから3年の月日が流れた……。

あれだけトーナメントを楽しみにしていた読者たちの目が濁り始め、『スラムダンク』第2部の時のように、だれもが続きが出るのを諦めた頃、タイトルも変わって突然の再開が決定! それが本作『喧嘩稼業』なのだ!

作中で描かれる陰陽トーナメントの出場者は、柔道の金メダリストや大相撲横綱といった表世界の頂点に立つ男たちから、戦場で何人も殺してきた傭兵や、武器使用ありの賭け試合で無敗を誇ったシラット使いなど、裏の世界の人間まで様々で、まさに陰陽入り混じった戦いが予想される。
そしてその1回戦第1試合は、“喧嘩師”工藤優作対“忍術 梶原柳剛流”梶原修人という、裏の世界の住人同士の戦いだ。
ヤクザの用心棒を務める工藤は、ビルの屋上から落とされても立ち上がる強靭さと、プロレスラーの腕を簡単にへし折る異常な怪力を持っている。対する梶原は、かつての戦いで片手を失いながらも多彩な技を持ち、対戦相手の食事に毒の混入も計画する策略家でもある。

一見どちらが勝ってもおかしくない組み合わせだが、読者は作中のキャラクターには知りえないある情報を持っている。
工藤優作は主人公・佐藤十兵衛のライバルであり、十兵衛がこのトーナメントに強引な手段で参戦したのも工藤にリベンジを果たすため。そして順調に両者が勝ち進めば、2人は次の2回戦で対決することになる。
一方の梶原は十兵衛の師匠とは因縁があるものの、十兵衛と直接関係する場面はそう多くなかった。

つまり、格闘マンガのセオリーからいけば、十兵衛のライバルである工藤の勝利はほぼ確定で、梶原の負けは決定的。
そもそも隻手の人間が、素手で力任せにレスラーの腕を折る奴と、逃げ場のないリングで戦って勝てるわけないだろ! あと梶原さん、眉と髪型がネタキャラっぽいし……。

これらの条件から、トーナメントの組み合わせを見た読者は「梶原さん生きてリングから出られるのかな……」あるいは「梶原さん、どんな風に死ぬのかな」と、梶原の敗北が当然のものと思い込んでいた。

しかし、しかし、だがしかし。この梶原修人が強かった!

掴んできた相手を電撃で仕留める「雷」……というニセ必殺技の情報、リング上での言葉を使った騙し討ち、工藤の怪力を片手だけでさばく多彩な戦術……試合中だけではなく、試合前から二重三重に仕込んだ策と布石をフル活用し、圧倒的に不利な状況を次々と覆す! そしてさらには普通の格闘マンガではお目にかかれない、とんでもないモノまで持ち出した!
この梶原の卑劣かつ巧みな試合運びに、「結果はわかりきってる」と冷ややかな視線を送ってきた読者たちの顔色も次第に変わり始める。

「あれ、もしかして梶原さん、勝っちゃうんじゃね……?」

そんな昨年日本中の格闘マンガファンを熱狂させた、陰陽トーナメントの1回戦第1試合が決着する瞬間まで完全収録! 勝つのは工藤か梶原か!?
また来月6月6日発売予定の第7巻では、主人公・十兵衛の試合が見られるので、そちらもお楽しみに。

単行本でまとめて読むと、「喧嘩稼業の著者 作画中に骨折」とかいうわけのわからない理由で、続きを何週も待たされなくてすむからいいよね!



<文・犬紳士>
養蜂家。好きな野鳥はメジロ。
Twitter:@gentledog

単行本情報

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