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『ひとり暮らしの小学生 江の島の夏』 松下幸市朗 【日刊マンガガイド】

2016/05/25


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ひとり暮らしの小学生 江の島の夏』


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『このマンガがすごい!comics ひとり暮らしの小学生 江の島の夏』
松下幸市朗 宝島社 ¥700+税
(2016年5月25日発売)


今から20年前、江の島にひとりで暮らしている小学4年生の少女がいた。名前は鈴音リン。
両親は他界。古い食堂を切り盛りして生活している。

ところがリンは、料理が死ぬほどへた……というか小学生の舌なので、なんでも甘くしてしまう。
そんなんだから、お店に客はほとんど来ない。
常連になっている客は、だいたいが彼女の健気さを応援している人だけだ。
彼らも料理は頼まず、無難なコーヒーだけ飲む。
彼女はいつも、赤貧だ。

いやいや待てよ、おかしいだろう?
まず小4の女の子が店を経営してる時点で、だれか引き取るとか施設に預けるとか考えないのか?
まずい料理を「まずい」と言って厳しく言うのが本当の親切ではないのか?
せめてつぎはぎの服のかわりに、お古でもいいから服をあげてもいいんじゃないか?
いっそ少しだけでもお金あげたらどうなのか?

たしかに周囲の人はみんなリンに優しいし、気づかってくれる。
値段より多く野菜を袋に入れるなど、甘すぎるでしょうというシーンも多い。
しかしそれは、みんなががんばっている彼女から励みを得ているからでもあるのだ。

みんな、リンが「親切にされている」と気づかないように、細心の注意を払っている。
だれも感謝の言葉や見返りを求めていない。善意の押しつけはいっさいない。

最後まで、彼女の生活は一般水準的に「大丈夫」ではない。
それでも、鈴音リンは、笑顔でいつづける。満足できているからだ。
彼女の見ている世界は幸せで、周囲の見守る人たちも幸せなのだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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