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『春の呪い』(小西明日翔)ロングレビュー! 「死んだ妹の婚約者とつきあってます」――世界のすべてだった妹を奪った男と逢瀬を重ねる女の狂気

2016/06/08


話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!

今回紹介するのは『春の呪い』

『春の呪い』著者の小西明日翔先生から、コメントをいただきました!

著者:小西明日翔

ほぼ10年前に書いた話をまさか自分でマンガにするとは夢にも思っておりませんでした。友人からは漢字が多すぎて無理と普通にダメ出しをくらったので、こうしておもしろいと思ってくださる方がいるということ、本当に恵まれていると感じます。ありがとうございます。

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『春の呪い』第1巻
小西明日翔 一迅社 ¥580+税
(2016年4月25日発売)


この作品は、じつに病んでいて、こじれたストーリーで構成されている。
しかしそれが表立っていないがゆえに、奇妙な静けさの漂う物語となっている。

静かに病み、静かにこじれて、キャラクターたちはその静けさのなかで激しく葛藤する。
一読ですごいとわかるのだが、読みこむにつれ、その重さがじわじわと染みこんでくる。なんとも噛みごたえのある奥の深い作品が登場した。

ことの始まりは、主人公・立花夏美の妹、立花春が死んだことだった。

かわいくて気だてがよく、頭のいい春。
夏美にとっては、春がすべてだった。
夏美の両親は一度離婚し、生みの母は出ていってしまっている。
春だけが、夏美にとっての家族――いや、それ以上だった。
そんな春を、あっという間に夏美のもとからさらっていってしまった男、柊冬吾(ひいらぎ・とうご)。

夏美と春が冬吾と出会った理由からして、じつは歪んでこじれている。
夏美たちの立花家は、今となってはごく普通の中流家庭だが、父親の血筋は財閥の出。
その血筋が必要な柊家は、息子の嫁に立花の娘を欲しがった。
とはいえ、冬吾の母の目当ては妹の春ただひとり。
親の目論見どおり、春は冬吾とつきあい始め、心を奪われていく。

春の、いまわの際の言葉。――これが夏美の脳裏に染みついて離れない。

春の、いまわの際の言葉。――これが夏美の脳裏に染みついて離れない。

そして春が死んだ今、冬吾はもうひとりの立花の娘である夏美と交際を始めたいと言う。
血筋だけが目当てと思われる、一見非道な申し出を夏美は条件つきで承諾する。
「春と二人で行った場所に…… わたしを連れて行ってくれませんか……」

夏美は、自分から春に縛られにゆく。つまり、わざわざ自分から「呪われ」にゆくのだ。
春が心から愛した、冬吾を通じて。

単行本情報

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