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『残響』第2巻 髙橋ツトム 【日刊マンガガイド】

2016/06/15


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『残響』


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『残響』 第2巻
髙橋ツトム 小学館 ¥602+税
(2016年5月23日発売)


アメリカン・ニューシネマの香り漂う無軌道な青春譚。

始まりは何本もの煙突から煙が立ちこめるどこかの工場町。死んだような毎日を送る智(さとる)は、隣人から嘱託殺人を依頼される。刺青の入ったその老人・瀬川元治(せがわ・げんじ)は末期がんに冒されており、拳銃と500万円を渡すから殺してほしいという。
はたして銃と金を手に入れた智は、人生を変えることができるのか……。

依頼を実行し、金を手に入れた智は、半世紀前に瀬川が殺した3人の遺族に香典を渡す旅に出る。しかし瀬川は元ヤクザ。殺した人間もカタギではない。
はたして最初の訪問先である暴力団「堂錠会」で、いきなり監禁されるハメに。この第2巻では、堂錠会の事務所から連れ出した組長の愛人・大悟(だいご)と智の凄絶な逃走劇が描かれる。

香典を渡す旅の最終地となる名古屋へ向かう途中、福島で暮らす大悟の姉にワンボックスカーをゆずってもらう手はずを整えた2人。だが姉は変わり果てた姿で現れ、間もなく悲劇が訪れる。
天涯孤独となった姉の息子・魁也(かいや)を抱えながら、どうにか名古屋に到着した一行。
そこに待ち受けていたのは、想像を絶する魑魅魍魎(ちみもうりょう)だった。

大ゴマ主体でセリフも極限までそぎ落とされ、まるでロードムービーを見ているかの趣でイッキに読まされる。
それでいて内容に物足りなさは微塵もなく、どっぷりとした澱のようなものが腹にたまる感覚に襲われる。
ひとコマひとコマが圧倒的な説得力を持ち、キャラクターの感情が生々しく流入してくるからだ。

無敵になれる銃と、自由になれる大金を手にしたはずの智は、「自分をまともな人間にするために命を懸けた」瀬川との約束を律儀に守り、危険な旅を続けてきた。このまま力ずくで運命に抗い、新しい世界にたどりつくことができるのか。
息を呑んだまま次巻を待ちたい。



<文・奈良崎コロスケ>
中野ブロードウェイの真横に在住。マンガ、映画、バクチの3本立てで糊口をしのぐライター。内村光良監督の話題作『金メダル男』(今秋公開)の劇場用プログラムに参加しております。

単行本情報

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