日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『ゆらぎ荘の幽奈さん』

『ゆらぎ荘の幽奈さん』 第1巻
ミウラタダヒロ 集英社 ￥400+税
（2016年6月3日発売）

冬空コガラシは、霊につかれやすい憑依体質の高校男児。
理不尽な借金を背負い住み家もない境遇だがいじけることなく、悪霊を素手でぶっとばす“肉体派霊能力者”として人助けをしている。

そんな彼が、除霊を条件に家賃免除で入ったのが、元は温泉旅館の下宿「ゆらぎ荘」。
変死した学生が化けて出るというウワサのせいで入居者が少ないという。

元凶はどんな霊なのか……!? さっそく温泉につかってコガラシが思案した時、白い三角頭巾を頭につけた少女がふわりと空中に出現する。すっ裸で。
人には自分が見えないと油断して勝手に湯浴みを始める少女。
これこそ、ゆらぎ荘の地縛霊・幽奈であった。

この幽霊、話してみれば心優しい寂しがりの女の子。除霊パンチをくらわすのは忍びない。
未練をつきとめて穏やかに成仏させよう、と方針を固めたコガラシが下宿生活をスタートさせた矢先、ゆらぎ荘のさらなる裏事情に直面する。
なんとこの宿、幽霊のほかにも、わずかな入居者がすべて人外の世界に関わる存在なのだ。

伝説の鬼・酒呑童子の末裔でプロの漫画家・呑子。
忍び道具で妖魔を討つクールな対魔忍……じゃなかった誅魔忍・狭霧。
猫神に魅入られネコ耳＆ネコ尻尾の生えたキャットガール・夜々。
ゆらぎ荘の最古参で管理人、かつ運勢を操作する座敷童子、仲居さん。

超自然な女性陣に囲まれ、裸を見たり見られたり、身体が触れあい、からみあい、浴場でばったり遭遇する等々、正統派お色気トラブルの嵐が少年を襲う！

温泉宿が舞台といえば『ラブひな』もかくやという趣向だが、ヒロインがオカルト設定しばりなのと、主人公が最初からバトルキャラとして完成されているのが持ち味。
また、幽奈の未練がまだ謎で、主人公もヒロインも過去の引き出しを残しており読者の関心を維持する手際がうまい。

そして、「週刊少年ジャンプ」という雑誌単位でも、本作は期待の星だ。
近年、「ジャンプ」本誌でエロコメ重視の連載は『i･ショウジョ』（2014、WEB移行）、『E-ROBOT』（2014～15）、『レディ・ジャスティス』（2015）があったが、いずれも単行本が3巻以内で短く完結。
「ジャンプ」本誌のエロコメ重点作品で、4巻にくものは、『ToLOVEる』無印が2009年に終わって以来、じつに7年ぶりとなるのだ（話数ストック的にほぼ確定）。

しかもそれが、ラブコメ激戦区だった2012年に『恋染紅葉』を手がけたミウラタダヒロ氏のリターンマッチでなしとげられるとなれば胸が熱くなるじゃありませんか！

＜文・宮本直毅＞
ライター。アニメや漫画、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』（総合科学出版）。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7