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『症年症女』第1巻 西尾維新(作) 暁月あきら(画) 【日刊マンガガイド】

2016/06/24


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『症年症女』


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『症年症女』 第1巻
西尾維新(作) 暁月あきら(画) 集英社 ¥438+税
(2016年6月3日発売)


登場するキャラクターたちに名前はない。主人公は「少年」で、ヒロインは「少女」。
少年はまったく症例のない病気にかかっていた。
ところがある日、同じ病気の、自分よりも派手な個性の持ち主の「少女」が現れた。
個性で負けた彼は、少女を殺そうと決意する。

『めだかボックス』コンビの新作は、女の子が独特な解説口調だったり、世界がコラージュされたりと、西尾維新節全開な作品になっている。
小学生の「少年」のひねくれっぷりがとにかく目立つ。
彼がかかったのは「個性のようなもの」が塗りつぶされて見えなくなっている病気。
12歳で必ず死ぬ。治療法は皆無の奇病だ。なのに彼はいっさい悲しまないどころか大喜び。
なぜならそれが最高の「個性」だから。自分がオンリーワンでありたくて仕方ないのだ。

比較して考えている時点で、彼は「個性的」ではない。
個性とはそもそも、奪いあうような相対的なものではない、個々の性質だ。
たしかに「少女」は、周囲と比較すると珍しい人間。
彼女の言動は他の人を驚かせ、病室は珍妙に飾られ、両親は変わり者で、美人で、天才。
だが彼女はそれをいっさい自慢もしないし、ひけらかすこともしない。

そもそも両親が変人なのは自慢にならない。少年はここを、「個性」と考えてしまう。
「本人に責任がない個性 うらやましい!! 無個性どもにいったいどれだけ理不尽な差別や偏見の目で見られてきたんだ!! 僕も自分のこと 呪われた運命って言ってみたいいい!!」

少年の殺意をめぐるこのミステリー作品は、「個性」の文字にがんじがらめにされている。
顔や名前などの人間の個性全部が塗りつぶされた、少年の見た世界を描く手法がおもしろい。
同じ症例の少女以外、だれがだれだか判別できないため、そこに謎が生まれていく。

裏テーマは「嫉妬」だろう。理性で制御できない複雑な感情だ。
少年の妬みは突飛なので共感しづらい。しかしアクが強すぎる少女を目の前にした時のクラクラする感覚は、うらやましいかどうかは別として、理解はできる。
個性があるから、嫉妬が生まれる。じゃあ個性をなくせば、本当に嫉妬は生まれないのか?
少年の殺害計画は、そう簡単にはいかなさそうだ。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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