日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『久住くん、空気読めてますか？』

『久住くん、空気読めてますか？』 第3巻
もすこ スクウェア・エニックス ￥562+税
（2016年6月22日発売）

「久住なんて何一ついいところなんてないじゃない　地味だし！　チビだし！　ダサいし！　ない！」
けれど目で追ってしまって、やたら気になってしまう。
周囲から見ると「それって恋じゃん」とあっさりいえる。
もっとも当の本人にしてみたら「好き」な要素がないのに気になるのって、落ちつかないもの。

学校一のモテ女・佐倉えりか。告白してきた男は数知れず、けれど全員をフっている高嶺の花。
なのに、まったく目立たない、クラスのなかでも友達はひとりしかいない地味男子・久住が気になってしかたない。
こういうのは、一度でも気になったほうの負け。気にするな、と念じれば念じるほど、視線がいってしまう。
視線を誰かに向けて赤面する少女は、かわいい。
久住が気になって赤面してしまう佐倉、それを見て彼女に惚れてしまう「恋の二次被害者」が次々出るのも、よくわかる。

空気が読めない少年として、周囲の人間から認識されている久住。
教室ではヘッドフォンをかけているし、映画の静かなシーンでポップコーンを食べるし、いらんところで腹がなる。あまりにもマイペースで、しかもいっさいしゃべらないから何を考えているのかわからない。
しかし読み進めていくと、じつは彼が誰よりも人の気持ちを察して動いているのがわかってくる。
佐倉が彼をどんどん気になり、好きになっていく原因はそこなのだが、彼女自身はイマイチわかっていない。

第3巻では、佐倉に憧れ、久住に恋をする少女・成田若菜が登場。彼女は「久住が人の気持ちのわかる人物」だと理解したうえで、憧れている。
佐倉もついに、「この気持ちは恋なのかもしれない」と認めざるをえなくなった。

久住の気持ちは今までほとんど描かれなかったが、この巻で彼の佐倉への気持ちがうっすら見えるシーンが出てくる。
久住と佐倉、初めての出会いの回想編も収録。

誰かのことが気になってしかたなくなるのには、何かしらきっかけがあるもんです。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」