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『かくしごと』 第1巻 久米田康治 【日刊マンガガイド】

2016/07/10


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『かくしごと』


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『かくしごと』 第1巻
久米田康治 講談社 ¥600+税
(2016年6月17日発売)


「かくしごと」は「描く仕事」と「隠しごと」のダブルミーニング。
「描く仕事」を「隠しごと」してる漫画家・後藤可久士の物語。それ、ほぼ久米田先生ご本人だ。
下ネタマンガを描いてた過去を背負い、近所の子どもにほかの作家のキャラを描いてくれと頼まれ(しかもうまい)、著者近影に全裸写真を使った黒歴史、仕事場を怪しまれて公安警察を呼ばれたこと……ぜんぶ『さよなら絶望先生』などのネタで知ってる!

しかし、ご本人も語っておられるように、後藤可久士=久米田康治ではない。
なぜなら、可久士にはキュートな愛娘・姫がいるから。「隠しごと」するのも仕事を彼女に知られたくないため……こんなかわいい娘さんがいてたまるか、久米田(先生)の野郎!ではなく、いかにもドラマじたての設定ってことですよ?
久米田マンガはいつも設定がぶっ飛んでいるが、今回はマンガの連載形式が型破りだ。
各話は「週刊かくしごと」という雑誌の体になっていて、それぞれ短い話が詰めこまれている。
「あとがき」が1冊の単行本に何回も出てきてビックリしたが、たっぷり久米田先生のボヤキが読めてオトクな感じ。

締め切りから逃避してギョーザを作るなど「漫画家あるある」ネタや、藤田和日郎……もとい不二多和日郎とかほかの漫画家イジりもあり。姫のお友だちは木津千里似の橘地莉子はじめ絶望少女にソックリで、安定の久米田節。

そうしたギャグの乱れ打ちから、父娘の胸にしみるドラマにきれいに落とす。
仕事の話を振られた父が「一応無職ではないな」と答えると、姫は「お色ついてないのもむしょくっていうよね」「じゃあいろんな色がいっぱいぬれるね」……その澄んだまなざし、胸にグッサリ刺さる社会人いっぱいいるから!

ところでこのマンガ、じつは18歳になった姫が父の秘密が隠された“匣”(隠れ家)を開けて、「隠し事」は「描く仕事」だったと知るところから始まる。
つまり未来が先に語られ、その後に過去が語られる倒叙形式だ。
いったい後藤可久士の身に何が起こったのか、『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』のような壮大な仕掛けが明らかになる日が楽しみだ。



<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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  • 『さよなら絶望先生』 第1巻 Amazonで購入
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