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8月13日は東ドイツが「ベルリンの壁」建設を開始した日 『どろろ』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/08/13


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

8月13日は東ドイツがベルリンの壁建設を開始した日。本日読むべきマンガは……。


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『手塚治虫文庫全集 どろろ』第1巻
手塚治虫 講談社 ¥850+税


本日8月13日は、東ドイツがベルリンの壁建設を開始した日だ。

ドイツは、第二次世界大戦で敗北、連合国へ降伏したことによって、アメリカ・イギリス・フランスの占領下にある西ドイツと、ソ連占領下となる東ドイツに分断される。
ベルリンの壁は、そんな情勢下で西側へと住民が逃亡するのを阻止するために、1961年より東ドイツ政府によって建設が開始された。

以後、ベルリンの壁は1989年に破壊されるまでの間ベルリンにそびえ立ち続け、長きにわたり東西冷戦を象徴する存在だったことから、多くのフィクションの題材となっている。
手塚治虫のマンガ『どろろ』の「ばんもんの巻」もそのひとつだ。

室町時代の日本を舞台に、身体の48箇所を妖怪に奪われた青年・百鬼丸と、百鬼丸が旅の途中で出会った子どもの泥棒・どろろが、妖怪を退治しながら戦乱の世を放浪する姿が描かれていく本作。

今回紹介する「ばんもんの巻」では、国境にあった町が戦をきっかけにばんもんと呼ばれる壁によって分断され、家族や隣人と引き裂かれた人々がクローズアップされる。
そんな民衆の悲劇を助長させていたのが、この回で登場する妖怪「九尾の狐」。九尾の狐は戦によって大量に発生した死肉を食らって増えた妖狐の親玉で、人々に妖術をかけて戦争を長引かせ、餌となる死体を増やさせるために暗躍していたのだ。

ばんもんの名前の由来は、2016年現在も現存する南北朝鮮の軍事境界線上にある地区「板門店」の日本語読みであろう。そのことからも、国家同士の諍いによって、かつての隣人や家族が敵となってしまう当時の情勢に対する風刺としてこの回が描かれていることは想像にかたくない。

また、「ばんもんの巻」では前述の分断された町の悲劇とともに、百鬼丸のじつの父にして、彼の身体を自身の栄達のために四十八体の妖怪へと捧げた醍醐景光を筆頭に、百鬼丸が家族とせつなき再会を果たすエピソードまでもが描かれており、見どころづくしな回でもある。
『どろろ』という作品を知るためには、うってつけといえるだろう。



<文・山田幸彦>
91年生、富野由悠季と映画と暴力的な洋ゲーをこよなく愛するライター。怪獣からガンダムまで、節操なく書かせていただいております。
Twitter:@gakuton

単行本情報

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