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『西遊筋』 第2巻 OTOSAMA 【日刊マンガガイド】

2016/08/19


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『西遊筋』


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『西遊筋』 第2巻
OTOSAMA 講談社 ¥570+税
(2016年7月22日発売)


太古の昔、世界をわかつ4大陸のひとつ・東勝身洲の花果山に生まれた不思議な石の卵から生まれ、「聖天大聖」を名乗って天界で乱暴狼藉の限りをつくした石猿・孫悟空。
悟空は釈迦如来によって五行山に封印され、500年間の長きにわたって幽閉されていたが、観音菩薩の導きで西域に取経の旅に出る高僧の供を務めるように諭される。

そしてその日。天竺へ向かうひとりの僧を「お師匠さん」と呼び、悟空は封印を解いてもらおうとするが、その僧、三蔵法師はゴリゴリマッチョの坊さんだった……。

16世紀・明の時代に大成した中国の伝奇小説『西遊記』をモチーフにしたweb発の4コマギャグマンガが、好評により2冊目の単行本化。
作者のOTOSAMA(おとうさま)はマレーシア生まれという異色の新星。日本のマンガ・アニメをこよなく愛し2009年より創作活動を開始したという逸材だ。

どこが逸材なのかというと、その日本人好みのギャグセンスにつきる。
あなたは海外の作家、なかんづくアジア圏の作家の創作物を読んで“……すまん、このマンガのどこがおもしろいのかわからん……”と思ったことはないだろうか?
無理もない。笑いのツボなんてものは各国の文化を背景にしたデリケートな要素なんだから、その“下地”なくしては笑いは成立しないし、さらにいうとそのおもしろみを説明した時点でギャグは鮮度を失う。

幸いなことに本作はそんなカルチャーギャップの心配はいっさいなし。
たぶん一行でいちばん強い(物理的に)三蔵法師と、貧乳・ドSだがキュートな孫悟空、巨乳でドMの豚野郎・猪八戒、スクール水着のネガティブ電波黒ギャル・沙悟浄に三蔵の乗り物つーか履物の白竜の5人は行く先々で待ちかまえる妖怪・悪人をぶっ飛ばしながら天竺への快進撃を続ける。

さらにうれしいのが、日本同様に中国以外でも有名な作品『西遊記』の世界観を意外なほど忠実に再現しているところ。
従来の国産西遊記ものにはこの要素が薄くてつねづね不満だった部分を解消してくれた点も、筆者のような『西遊記』ファンをニヤリとさせてくれる。

前巻で一行が出そろい、快進撃の第2巻ではややマイナーな黄袍怪(こうほうかい)からメジャー妖怪の金角・銀角が登場。さらには悟空の義兄弟にして火焔山の妖怪軍団のボス・牛魔王の一人息子・紅孩児(こうがいじ)まで登場して次巻へ続く、となる。
『西遊記』を知らない人でもゼッタイ楽しめるので、未読の方はぜひ読んでほしい!



<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わる。『別冊宝島 「仮面ライダー」伝説の10人ライダー総特集』や、ただいま絶賛発売中の『手裏剣戦隊ニンニンジャー公式完全読本 天下無敵』にも参加しています。
『西遊記』は岩波文庫版を読むほどに大好きで、現在深夜の時代劇専門チャンネルが見のがせない。

単行本情報

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