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9月1日は宮崎駿(映画監督)が引退を発表した日。 『シュナの旅』を読もう! 【きょうのマンガ】

2016/09/01


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

9月1日は宮崎駿が監督引退を発表した日。本日読むべきマンガは……。


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『アニメージュ文庫 シュナの旅』
宮崎駿 徳間書店 ¥448+税


2013年7月20日、模型情報誌「モデルグラフィックス」誌に連載の『風立ちぬ』を原作とした長編アニメーション映画『風立ちぬ』が全国公開となった。
当月20日・21日の2日間での映画観客動員ランキングで初登場第1位となった同作だったが、宮崎駿監督を擁するスタジオジブリはそれから間もない9月1日、宮崎監督が長編映画製作から引退することを発表。アニメ業界やファンに衝撃を与えた。

『風立ちぬ』もそうだが、いわゆる漫画家としての宮崎駿は、これまでも映像化が困難そうだが深く心を寄せる作品をマンガというメディアで数多く表現している。
今回ご紹介『シュナの旅』もそのなかのひとつ。

雑穀しか育たないやせた土地の谷にあり困窮にあえいでいた小国の王子・シュナは、行き倒れの旅人が持っていた金色の種=麦を手に入れるため、はるか西の彼方「大地果つるところ」にあるという豊穣の地を求めて命がけの旅に出る。
チベット民話『犬になった王子』をベースとしたストーリーだが、登場人物や世界観は宮崎氏オリジナルのものだ。

特筆すべきは、のちの『風の谷のナウシカ』(1984年)や『もののけ姫』(1997年)に登場するキャラクターが見られる点だろう。
シュナ王子が旅の相棒に選んだ動物「ヤックル」はまんま『もののけ姫』のヤックルで、厳密には『シュナ』のヤックルは分類学上の呼称と思われ、『もののけ』のヤックルは「アカシシ」という鹿の一種の固有名であるが、その姿は同一といってもよいだろう。 さらにはマンガ版『ナウシカ』はじめ『もののけ姫』、『天空の城ラピュタ』(1986年)世界にも出てくる最多登場生物「ミノノハシ」も本作のあるシーンに登場する。

今から30年以上前に発表された作品で描かれた世界観がのちの作品に影響を及ぼしている点にも舌を巻くが、何より「少女が傷ついた少年をいやし、その心の力を取りもどす」というテーマが息子である宮崎吾朗監督の『ゲド戦記』にも通じていることに驚かされる。
当初『シュナ』の映画化に宮崎監督は否定的だったとされるが、本作へのオマージュをこめて『ゲド戦記』が作られたとするならば、それもクリエイターのDNAがなせるわざと感慨深い。



<文・富士見大>
編集・ライター。特撮のあれこれやマンガのあれこれに携わるほか、歴史ものもたしなむ。『別冊宝島 「仮面ライダー」伝説の10人ライダー総特集』や、ただいま絶賛発売中の『手裏剣戦隊ニンニンジャー公式完全読本 天下無敵』にも参加。スタンスとしてはアニメよりも特撮寄りです。

単行本情報

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