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『名探偵コナン』 第90巻 青山剛昌 【日刊マンガガイド】

2016/09/21


p class="none">日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『名探偵コナン』


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『名探偵コナン』 第90巻
青山剛昌 小学館 ¥429+税
(2016年8月18日発売)


「週刊少年ジャンプ」で長期連載を続けていた、秋本治『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が、9月17日発売の「週刊少年ジャンプ」42号で最終回を迎えることとなった。
コミックスも同日に発売される第200巻で完結となる。
『名探偵コナン』は、『こち亀』同様の長期連載作品で、「週刊少年サンデー」誌上での最長連載記録を更新し続けているのだが、最新刊の第90巻では、またしても「黒の組織」が事件に絡んできて、読者をハラハラさせる展開となっている。

謎の結社――「黒の組織」が製造した薬により、子どもの姿となってしまった高校生探偵・工藤新一。
新一は、発明家・阿笠博士のもとに身を寄せ、小学生「江戸川コナン」として暮らすこととなる。
新一は、幼なじみの女子高生・毛利蘭、蘭の父親で私立探偵の毛利小五郎、あるいは小学校の同級生、吉田歩美・円谷光彦・小嶋元太らの「少年探偵団」や自分と同様に子どもの姿となった灰原哀らともに事件に挑むわけだが、真相を見抜いても小学生の「コナン」では話を聞いてもらえないジレンマに襲われる。
ただし、信用された場合には「小学生名探偵」として注目され、「黒の組織」にマークされてしまうため、それも好ましくない。
そこでコナンは、蝶ネクタイに隠した「変声器」を用いて、小五郎や阿笠博士といった大人の口を借りて推理を語る。そうした場合には、腕時計に仕掛けた麻酔で対象者を眠らせるため、毛利小五郎は「眠りの小五郎」なる虚名を博している。

『名探偵コナン』では、コナンと「黒の組織」との対決が物語の軸となるのだが、両者の対決は、常に描かれるわけではない。無関係そうなエピソードから、いきなり「黒の組織」との対決へ移行するパターンが多く、そうした展開の妙が『名探偵コナン』のおもしろさなのである。

『名探偵コナン』のそうした特徴は、本書第90巻にもよく表れている。

前巻(第89巻)でコナンたち「少年探偵団」は、ミニパト巡査の宮本由美が、将棋の羽田秀吉名人から受け取ったという「婚姻届」探しに奔走する。
そのエピソードの終盤で、秀吉が口にした「羽田浩司」という名前に灰原が反応。
羽田浩司とは「黒の組織」が製造した薬品「APTX4869」の使用者リストに載っていた人物なのだ(「APTX4869」は、工藤新一や灰原が服用したもの。肉体が幼児化する作用があるのだが、本来の開発目的は謎である)。
『名探偵コナン』のもうひとつの軸は、新一と蘭をはじめとする、登場人物間の「ラブコメ」なのだが、物語はここで由美と秀吉の恋愛をめぐる「ラブコメ」から、一挙にもう一方の軸である「黒の組織」が絡んだハードな展開へとシフトしていくのである。

羽田浩司をめぐる事件とは、次のようなものだ。
羽田は、17年前渡米中にホテルで殺害された。同じホテルの別の部屋で、アメリカの資産家アマンダ・ヒューズも殺され、この2つの事件は関連があるものとみられている。
2人とも死因は「不明」で、APTX4869が用いられたものと推測される。
アマンダのボディガードで、事件後姿をくらませた「浅香」(ASAKA)という人物が最有力容疑者となっているが、写真などは残っておらず、「浅香」も名前か苗字かわからず、性別すら特定できていない……。

といった状況で、ストーリーは第90巻に突入していくのだが、アマンダ・ヒューズの事件と似通った殺人事件が発生したり、新曲「ASAKA」(アサカ)の発表を控えたロック歌手がステージで宙吊りになって殺害されたり、と17年前の出来事を想起させる事件が連続するのだ。
さらに、「黒の組織」のナンバー2「ラム」に迫る手掛りが発見されたり、沖矢昴、世良真純、安室透といった新顔の登場人物たちの関係性が明らかになったり、と第90巻は『名探偵コナン』のなかでもターニングポイントとなる重要な巻だと思う(個人的には、「黒の組織」のジンが毛利小五郎の存在を意識し始めたのが気になる。これこそ工藤新一がもっとも恐れていたことなのだ)。

このように「黒の組織」に絡んだハードな物語が続いた第90巻の最後を飾るのは、コナンと蘭が、新一のライバルである「西の高校生名探偵」服部平次とともに、静岡の山奥まで徳川の埋蔵金を探しに行くというエピソードである。
鵺を思わせる怪物が出現し、鵺に襲われたような死体が発見されて……というところへ次巻に続く、となる。
「黒の組織」が関連した重い物語の後の、気分転換には最適な、ベタな展開のエピソードである。

こうした巧みなギアチェンジができるところが青山剛昌のうまさであり、『名探偵コナン』が長く人気を博している理由でもあるのだろう。



<文・廣澤吉泰>
ミステリマンガ研究家。、「ミステリマガジン」(早川書房)にてミステリコミック評担当(隔月)。「2016本格ミステリ・ベスト10」(原書房)でミステリコミックの年間レビューを担当。

単行本情報

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