日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『たくあんとバツの日常閻魔帳』

『たくあんとバツの日常閻魔帳』 第1巻
井谷賢太郎 集英社 ￥400+税
（2016年9月2日発売）

主人公・九十九多九郎（つくも・たくろう）は、平穏無事な日常を求める高校生。
食卓を幸せにするのは、たまに食べるステーキ（非日常）ではなく、いつものたくあん（日常）。そんなポリシーを掲げて「たくあん」とアダ名される少年だ。

ところが、そんな彼に、とんでもない非日常がふりかかる。
閻魔大王の娘・バツが現れて、ある事件の調査へ協力を求めてきたのだ。

近頃、人を襲って町を騒がす怪人の噂。
その裏には地獄の住人、通称“鬼ノ怪”（もののけ）が関与しているとバツは語る。
発端は、死人を裁く閻魔大王が暗殺され、あの世の秩序が崩れたことにあるという。
おさえのなくなった地獄の妖怪たちが現世へ潜りこみ、人間にとりついて悪意を増幅、異能を持った怪物へ変化させているのだ。

バツはたくあんを自分のために働く獄卒に任命、2人はコンビを組んで秩序を乱す怪異へ立ち向かっていく……というのが本作の大筋だ。
たくあん自身も、過去に自分の家族を殺した犯人へ強い憎悪を抱いた際に鬼ノ怪にとりつかれており、ピンチになると鬼に変身して戦うなどアツい展開がつまっている。

しかし、本作の真の見どころは、合間にちょくちょく挟まれるフェティッシュな要素にある。

裁きの権化たる閻魔の娘・バツちゃんは、とにかく物事のバランスが均等でないと気がすまない性格。
たくあんに裸を見られたり触られて恥をかくたび自分も同じ恥を与えなければと逆に押し倒してくるのがおもしろい。
最初に現世へ出てきた時には、たくあんの股間にうっかり頭突きしたため「罪には罰 !!　股間には股間 !!」と自分の股間にも頭突きするようたくあんへ強要。
超ミニスカなチャイナドレス風衣装で脚を大股に広げ、強迫観念にかられた必死の形相で局部を近づけてくるヒロイン……。どんなんだ！

さらに毎回、罪人を裁くクライマックスで、相手を一口サイズに縮小させてきわどいアングルから見下ろし、ゴクリと呑みこむシチュも相対的巨大娘フェチ（シュリンクフェチ）への刺激でインパクト抜群。
ほかのキャラも、本巻の終盤に出てくる、むちむち牛鬼っ娘の牛頭（ごず）ちゃんは口に指をつっこんでオエッとゲロめいて吐き出すビーム攻撃のアクションが艶かしい。ゲロめいてるというかゲロだよ！　どんなんだ！
いったい、純真な少年読者を何に目覚めさせようというんですか、井谷先生ーっ!!

なお、個人的にもっともドキドキしたのは第2話、パンツ泥棒を捕まえたバツちゃんが判決をいいわたす場面でした。

「一生パンツで興奮できなくしてやろう」
「うわああああああ」

こ、こわい！

＜文・宮本直毅＞
ライター。アニメやマンガ、あと成人向けゲームについて寄稿する機会が多いです。著書にアダルトゲーム30年の歴史をまとめた『エロゲー文化研究概論』（総合科学出版）。『プリキュア』はSS、フレッシュ、ドキドキを愛好。
Twitter:@miyamo_7