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【日刊マンガガイド】『一週間フレンズ。』第6巻 葉月抹茶

2014/08/04


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『一週間フレンズ。』第6巻
葉月抹茶 スクウェア・エニックス \476+税
(2014年7月22日発売)


先日、TVアニメ化をはたしたばかりの本作。各話が4コマおよび1ページのショートページと、通常のストーリー部分が組み合わさる、珍しい構成となっている。
そんな特殊な構造で、友だちに関する記憶が1週間で消えてしまう……そんなせつない設定で、あたたかな人間関係を描く。

クラスメイトの藤宮香織に、「俺と友達になってください」と突然声をかけた、高校2年の長谷祐樹。
香織にとっては突然でも、祐樹は香織のことを以前から見ていた。ひとりきりで人と関わろうとしないのに、どこか優しさと寂しさを感じさせる香織のことが気になっていたのだ。
しかし香織は、自分は友だちをつくってはいけないと、申し出を拒否。香織は友だちに関する記憶だけが、1週間でリセットされてしまい、月曜にはそのすべてを忘れてしまうということを祐樹に告げるのだった……。

それでも月曜がくるたび、「友達になってください」とイチから友だち関係を始める祐樹。彼とのつきあいのなかで、少しずつ明るさと記憶を取り戻していく香織。そんな2人を、さまざまな人が取り囲む。
祐樹の友だちで、一見不愛想ながらも友人思いの桐生将吾。新たに友だちになりたいと、香織に声をかける天然な性格の山岸沙希。そして記憶をなくす前の香織を知る、九条一。
少しずつ輪が広がっていくさまに、読者もほっこりとさせられる。

香織が記憶をなくすにいたったであろう原因が語られ、そのことで苦しむ一。
今巻では、もともと友達関係にあった一と香織のことを第一に考え、自分は距離を取ったほうがいいのではないかと悩む祐樹の姿が描かれる。はたして、祐樹が選ぶ答えは?

出てくるみんなが、純粋で不器用。だけれど、少しずつ近づいていく距離と、広がっていく世界。
友だちとの記憶が一週間でリセットされるという大きな「設定」に反して、本作で描かれているのは、誰でも体感し得るささいな喜び、ささいなすれ違い。だからこそ、誰にとってもドラマティックなものになっている。

友だちという存在についてあらためて考えさせられ、それがあたたかな気持ちにも、せつない気分にもさせてくれる作品である。



<文・渡辺水央>
マンガ・映画・アニメライター。編集を務める映画誌「ぴあMovie Special 2014 Summer」が発売中。DVD&Blu-ray『一週間フレンズ。』ブックレットも手掛けています。

単行本情報

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