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『おいしいロシア』 シベリカ子 【日刊マンガガイド】

2016/10/08


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『おいしいロシア』


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『おいしいロシア』
シベリカ子 イースト・プレス ¥1,100+税
(2016年9月5日発売)


ソ連崩壊から20年以上がたつが、いまだにロシアと聞くと「くらい・さむい・こわい」といった「おそロシア」なイメージを持つ人は少なくないはず。

本書の主人公であるシベリカ子さんもまさに、そんなひとり。
イタリアだったら「いいね!」と即答するのに、ロシア人の旦那に押しきられ、1年間ロシアで暮らすことに……。
本作はそんな彼女が、ロシアでの暮らしぶりを「食」を中心につづったコミックエッセイ。

ボルシチ、ビーフストロガノフ、ガルプツィ(ロールキャベツ)、サイコロ野菜をマヨネーズであえたオリヴィエサラダ、バターを塗ってイクラをのせた白パン……。
出てくる料理のどれもこれもがめずらしくって、おいしそう!

ピンクの外壁の宮殿や美術館、キリル文字、サモワール、ダーチャ、シャシリク……。
「ロシアに薄切り肉という文字はない」「何にでもスメタナ(サワークリームのようなもの)を掛けたがる」「毎食後に紅茶と甘いお菓子をペロリと平らげる」といった、なるほどザ・ロシアなネタも楽しく、知ってるようでじつは知らないロシアという国に親近感がムクムクと沸き上がってくる。

おだやかで飄々としたシベリカ子さんとトボけつつも優しいロシア人夫・P氏(擬クマ化キャラ!)のほのぼのしたやりとりも楽しく、ひと筆書きのような脱力&素朴かわいい絵も世界観にみごとにマッチ。
ちょっと色あせたようなパステルカラー(そう、オールフルカラーなのだ)も旧共産圏らしいノスタルジーをくすぐり、どこか異国の絵本を読むような気分に。

寝る前のひとときにパラパラとながめて楽しみたい。



<文・井口啓子>
ライター。月刊「ミーツリージョナル」(京阪神エルマガジン社)にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」(DU BOOKS)寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69

単行本情報

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