日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『吉祥寺だけが住みたい街ですか？』

『吉祥寺だけが住みたい街ですか？』 第3巻
マキヒロチ 講談社 ￥565+税
（2016年10月6日発売）

森三中の大島美幸＆メイプル超合金の安藤なつ主演によるTVドラマ化もついにスタート！
ますます話題の物件探しマンガ『吉祥寺だけが住みたい街ですか？』の第3巻が出た。

吉祥寺で不動産業を営む双子の重田姉妹をナビゲーターに、毎回さまざまな人の家探しが一話完結スタイルで描かれてゆく。

ホームパーティーができる一軒家を探しているレズビアンのカップル、実家を出て都内ひとり暮らしを満喫したいOL、シェアハウスを卒業して緑のある街でマイペースに暮らしたいフランス人……。

彼らは当初「人気の街だし」「便利だし」「ずっと住んでるし」といった漠然とした理由で吉祥寺で家を探そうとするが、重田姉妹（巨体＆タメ口＆メタル好きで超食いしん坊！）と雑談するうちに自身の抱えている問題や求めている生き方に気づき、それを実現できそうな街や物件で新たな一歩を踏み出してゆく。

その希望に満ちた姿もすがすがしく、職業や性格も人それぞれなら、生活のしかたも人それぞれであり、人の数だけ家探しのツボがあるのだと感心、思わず我が身を振り返らずにいられない！

いわゆる街歩きモノ的な楽しさも満載の本作。
第3巻では福生や十条など、ちょっとディープな街が登場。
また「重田姉妹の実家のリノベーション」もいよいよ動きだし、工事中の自身の仮住まいを探す――という新たなミッションも登場。図書館好きの都子のために都内のいろんな図書館をめぐる回もあり、あの手この手で飽きさせない。

毎回単独のエピソードをしっかりと読ませつつ、そこに作品全体の物語もうまくリンクさせて描いてゆく構成も『いつかティファニーで朝食を』同様、うまいな～と感心。
願わくば末長くチマチマと楽しみたい、なんとも愛すべき作品なのです。

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69