日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『夏目友人帳』

『夏目友人帳』 第21巻
緑川ゆき 白泉社 ￥429+税
（2016年10月5日発売）

生まれつき妖怪の姿が見える夏目は、幼い頃から周囲に気味悪がられてきた。
両親とも幼い頃に死別しており、夏目の人生は、常にまわりに理解されないつらさとともにあった。
しかし、母方の祖母・レイコが生前をすごした土地で暮らすことになった夏目は、レイコもまた、妖が見えるために、周りから忌み嫌われていたと知る。

ただ、レイコちゃんはちょーっとじゃじゃ馬で、目にする妖、目にする妖を見つけてはコテンパンに打ち負かし、「きょうからお前を子分とする！」と勝手に宣言。
「ほいほい、ここに名前を書いちゃったら、お前はもう子分だぜ」みたいな感じで、負かした妖たちの名前をリストアップした「友人帳」を勝手に作成☆

ジャイアンかよ！

さぁたいへんなのは孫の夏目くんだ！
「なんかレイコの孫が『友人帳』持ってるらしいよー」的な噂が妖たちの間に広まって、「返せー」だの「レイコのかわりにぼこらせろ」（みたいなこと）だの言ってくるわけですね。

そこで、妖怪のなかではそこそこ強いっつー「斑（まだら）」と「オレが死んだらお前に『友人帳』譲るから」という契約を交わし、ともに「友人帳」を守ることにした夏目くん。
普段はかわいい招き猫に乗り移った斑（ニャンコ先生）とともに、愉快な妖怪ライフをすごします。

こんな長々とした説明の必要がないくらいの大人気作なわけですが、長々と説明しましたよ。
だっておもしろいからね!!!

連載開始から13年がたってなお、勢いを増す夏目友人帳の人気は、アパレルブランド「earth music ＆　ecology」ともコラボするほど（びっくり！）。10月からは、第5シーズンとなるアニメの放送も始まって、のりにのってるんだぜ。最新刊の21巻もぶっとばしていくぜ！

今回、収録されているエピソードは4つ。
どれも超イケイケなわけですが、個人的一押しは、なんだかんだで仲良しな夏目とニャンコ先生が、ひょんなきっかけで対抗しあう第82話。
見るからに弱そうで頼りない妖怪・ミツミは、親分である岩鉄から、ある大役を任された。
ミツミは、親分が自分を信じてくれたことがうれしくてしかたない。
しかし、豪快なところのある岩鉄は、自分が命じた者でなくとも、役目を果たした者にはほうびを与える。酒とか。

夏目は当然、ミツミの力になってあげようとするのだが、酒に目がくらんだニャンコ先生はミツミを出し抜こうとする。

珍しく、別々に行動する2人……。そこで、夏目はふと物思いにひたる。
「そばにいるのが当たり前」と感じるほど、ニャンコ先生との距離が近づいていると気づくのだ。
ひと騒動あったあと、夏目とニャンコ先生とが、視線を交わすコマがいい。

＜文・片山幸子＞
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。