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『南紀の台所』 第4巻 元町夏央 【日刊マンガガイド】

2016/11/11


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『南紀の台所』


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『南紀の台所』 第4巻
元町夏央 集英社 ¥600+税
(2016年10月19日発売)


恋人・巴の転勤がきっかけで結婚して紀伊半島の田舎の港町に暮らすことになった蘭は、東京生まれの東京育ち。近くにコンビニもスーパーもなく、日々の買い物もままならない新婚生活に、最初は戸惑いを隠せなかった。
しかし、南紀には海の幸・山の幸が盛りだくさん!
何よりも、自分で獲った食材を、新鮮なうちに調理して食べる喜びがあった。

第4巻に登場するメニューの一例がこちら。
畑で収穫した野菜をその場で調理して楽しむランチ、自分で獲ったイセエビでつくるクリスマスディナー、氷瀑を見ながら食べる、日本酒たっぷりのしし肉の豚汁風……。

南紀で味わう、都会では口にできない料理の数々。
おだかやな風土が育てた食材と、そこに暮らす優しい人たちの魅力に、蘭はすっかりはまっていく。

そんななか、蘭は久しぶりに東京で1日を過ごす。
カフェでくつろいで、おしゃれして同窓会に出席して……。
心待ちにしていたはずなのに、違和感を隠しきれない蘭。

南紀で身についた暮らしのリズムは、東京での暮らしのリズムとはかけ離れたものになっていたのだ。
今の蘭にとって、「ただいま」をいう場所は、巴と暮らす南紀の港町だ。

第4巻でラストを迎えた『南紀の台所』の読後感は、どこまでも健やか。
そしてこの健やかさは、都会で暮らす人の心にこそ、効くはずだ。
豊かな自然に囲まれながら、人と人との濃いつながりのなかで暮らす以上の幸せはないと、『南紀の台所』が教えてくれる。



<文・片山幸子>
編集者。福岡県生まれ。マンガは、読むのも、記事を書くのも、とっても楽しいです。

単行本情報

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