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『ECHOES』 歩 【日刊マンガガイド】

2016/12/10


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ECHOES』


echoes

『このマンガがすごい!comics ECHOES』
歩 宝島社 ¥700+税
(2016年12月10日発売)


スポーツは必ずしも、友情でするものじゃないと思う。仲よしこよしじゃなくても強いチームは、いっぱいある。

青(せい)の通う、旭川新緑の女子バスケットボール部。
いつもケンカばかり。バラバラだ。
猛獣のように気が強い金子。気まぐれで金子を嫌い、煽る葉月。
まじめで優しいナツ。超ナイーブで人と話すのを好まない飛鳥。

練習の時も試合の時も、個性がぶつかりあいすぎて、まったくうまくいかない。「勝ちたい」という気持ちは同じなはずだが、空回りばかり。
青はそんな部が歯がゆくてしかたない。
「はぐれもの」と呼ばれ、ひとり黙々と練習する飛鳥に、青は声をかける。

友情で力をあわせて、という物語ではない。部活以外ではみな、話もしない。
実力はみんなあるのに、意地を張ってパスを回さなかったりして、試合はぐちゃぐちゃになる。
これは試合のなかにおける、戦友としての関係を築いていく物語だ。

部員が戦っているのは、「仲間をどこまで信頼できるか」の心のゆらぎだ。
青春の最中の仲違いは、そんな簡単に解消できるものじゃない。特に金子の飛鳥への行動は、ほとんどいじめ。一朝一夕で直るものではない。
相手は自分と違う存在なのだ、ポジションも能力も違うのだ、と認めるのが、一番大事だ。それが難しい。

青は自分の性別がよくわからない。自分に声変わりがこず、男にならないことに違和感を感じている。
そんな青が、ひとりきりで活動する飛鳥に接触し、会話しようとする。
飛鳥は青のことをあまり気にかけていなかったが、しだいに青を認めるようになる。
「個」が受け入れられるのは、心からうれしいことだ。

この作品では、「少女」を意識した表現を用いていない。みんな胸も骨盤も大きくなく、中心になる青と飛鳥は髪も短い。中性的だ。
もちろん女子バスケにおける「女性」ならではの強みはあるだろう。でも旭川新緑に必要なのは、性別じゃない。

1人ひとりは「個」を持っているからぶつかりあう。そして「個」があるから、試合中はそれを信じて、任せられる。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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