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『秋葉原は滅亡しました』 仁藤砂雨(作) 湧井想太(画) 【日刊マンガガイド】

2017/01/13


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『秋葉原は滅亡しました』


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『秋葉原は滅亡しました』
仁藤砂雨(作) 湧井想太(画) リイド社 ¥1,000+税
(2016年12月16日発売)


人類は、滅びた。
人1人いない秋葉原にやってきたのは、まったく別の知的生命体。
宇宙考古学者ラスカは、秋葉原に数多くある薄い本を手に、考えた。
絵が多く、文字が少ない。
「幼児向けの言語学習用教材ね」

オタク文化は時として不可解。
なかでも同人誌は、知らない人にはなんの目的の本なのか、わからないだろう。
これを異世界の存在が見たら、どういう文化なのか理解できるはずもない。

同じような文書(マンガ)なのに、描きこみが多いものと、ほとんどないものがある。
そもそも分厚い文書(雑誌)は紙質が悪い。薄い本(同人誌)のほうが高級なの?
たくさん並んでいる小さい個体(フィギュア)は、クローンなんだろうか。
光る剣(サイリウム)を持った兵隊たち(アイドルのファン)がうごめいて、何かに操られるように叫んでいる映像は、なんなのか。
ひょっとして、ここは軍事都市なのではないか?

途中から、だいたいあっている説を唱えるエドルが登場、ラスカのトンチンカンな分析に異を唱え始める。エドルは秋葉原に「生活感がない」と指摘する。
いわれてみればたしかに、秋葉原の中心は店舗が立ち並んでおり、あまり「人が住む」感じではない。トイレが少ない、宿舎にあたる睡眠スペースがない。
衣食住の設備が住人の数を満たせない。

オタク文化に対し、四方八方にケンカを売ったネタが多いマンガだ。
その根っこにあるのは「それでも秋葉原が好きなんだよなあ」という熱意。
あらためて別視点から見ると、独特なオタク文化・電気街文化が、愛しくなってくる。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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