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『ばくおん!!』 第9巻 おりもとみまな 【日刊マンガガイド】

2017/01/22


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『ばくおん!!』


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『ばくおん!!』 第9巻
おりもとみまな 秋田書店 ¥562+税
(2016年12月20日発売)


昨年アニメ化した、バイク×女子高生マンガも9巻目。
今までは佐倉羽音(さくら・はね)たちバイク部が、おもにツーリングなどでバイクを楽しんでいる。
第9巻のテーマは、レーサーが持つ勝敗の意識だ。

メンバーのなかで唯一の1年生、中野千雨(なかの・ちさめ)。
彼女はミニモトの天才レーサー。常勝無敗をほこっている。
ある日、父親がレーシングチームを結成したのを知る。ただし、彼女を抜きにして。
父は千雨に、人間としての魅力が足りない、と語る。
スピードこそがすべてだと信じている千雨は、父のチームに対抗すべく、耐久レースに参加することを決意する。

この巻での千雨の扱いは、さんざんだ。
優勝し続けてきた千雨は、敵が多い。
アナウンスまで、彼女の淡々とした試合スタイルを「正直私はキライです!!」というほど。
まわりが敵だらけの千雨は煽り耐性が高く、「早ければいい」というストイックな走りを繰り返している。

ところが今回の耐久レースでは、マイペースすぎるバイク部と組んだことで、順位はボロボロ。
あげく焦りすぎてガス欠、回収車に運ばれるという赤っ恥をかくことに。

何もかもを千雨が失った時、同じ部で参加している、バイクを異常なスピードで乗りこなす来夢先輩に勝ちたい、という思いがわきあがる。
1位なんてもう、どうでもよくなった。
それよりも「勝負」の楽しさに目が向いた瞬間だ。

『ばくおん!!』シリーズは、女の子たちへのいじりかたが、比較的きつい。
千雨がレース後に泣き出した時、観客はいっせいに彼女を笑い始める。このコマだけ見るとかなりかわいそうだ。
だが、これは愛だ。応援だ。
今まで冷淡な走り方だった千雨に、観客は興味を持たなかった。
「勝ちたい」という思いがほとばしる、人間味あふれる千雨のことは、気にかかる。笑って、好きになったのだ。

「レースとは「応援されること」…「実力で勝った」なんて言ったら
応援は要らないって言ってるようなものよ…」
千雨の父がスカウトした少女はそういいながら、優勝インタビューで愛想笑いを振りまき、スポンサーのグッズをアピールする。
これもまた、勝負のかたち、応援のかたち。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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