日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい！WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー！

今回紹介するのは、『捻じ曲げファクター』

『捻じ曲げファクター』 第3巻
守月史貴 白泉社 ￥600+税
（2016年12月26日発売）

女子高生・鴨川紗知（かもがわ・さち）。
幼なじみの小山内流夏（おさない・るか）といっしょにいてドキドキすると、ラッキースケベを起こしてしまう特異体質の持ち主。
スカートがめくれっぱなしだったり、胸を押しつけてしまったり、裸を見せてしまったり。

これだけならまだ笑って許せた。
問題は、紗知の力が無理矢理にラッキースケベを引き起こすために、事象を捻じ曲げてしまうことだ。エロハプニングのために、橋が崩れたり、床が抜けたり、地面が割れたり。
ラブコメマンガで描かれるえっち表現技法は、そのまま作用すると、周囲の人間の命に関わる大事故になってしまう。

第3巻では、「大人になること」で治るのではないか、という説があがる。
一番可能性が高いのは、セックスだろう。
だが恋人になった流夏に触れようとすると、ラッキースケベが発動。
どうしてもセックスまで進めない。

紗知の力は、エロを最優先にするために、何もかもの法則を壊してしまう、いわば奇跡だ。
この巻では、力に振り回されっぱなしだった2人が、発作を応用するシーンがある。
流れを把握し、ラブコメ現象になる引き金の引き方をちゃんとつくってやれば、自分の周囲の事象を都合よく変えてしまえる。
逆にいえば、だれかに悪用されれば、とんでもないことになる。

えっちな出来事に巻きこまれる紗知と、彼女のまわりで渦巻く黒そうな事件の数々が魅力の作品。
ひときわ光るのは、流夏のイケメンっぷりだ。
最初は幼なじみの距離感をわきまえて登場した彼。
紗知の事情を知ってからは、身を挺して彼女を守ろうと奔走する。
火のなかに飛びこんで紗知のもとまで行く度胸もあれば、気配りができ料理がうまく女子力も高い。
ほかに出て来るキャラ（ハーレム因子の持ち主・百花など）とくらべてなんの能力もないが、彼の「必ず助けにくる」という安心感は半端じゃない。まるで王子様だ。

紗知が厄介事に巻きこんでしまっても、彼は絶対に受け止めてくれる。
エロコメ描写は少年マンガ的。人間関係の表現は少女マンガ的だ。

＜文・たまごまご＞
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」