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1月28日は「セレンディピティの日」 『エイリアン通り(ストリート)』を読もう! 【きょうのマンガ】

2017/01/28


365日、毎日が何かの「記念日」。そんな「きょう」に関係するマンガを紹介するのが「きょうのマンガ」です。

1月28日は「セレンディピティの日」。本日読むべきマンガは……。


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『白泉社文庫 エイリアン通り(ストリート)』 第1巻
成田美名子 白泉社 ¥667+税


「セレンディピティ」というワードを、聞いたことがあるだろうか。

「素敵な偶然に出会うこと」や「予想外のものに出会うこと」、もっといえば、それに気づく能力のこと。広く解釈すれば、幸運をつかむ能力も意味する。
イギリスの政治家で小説家でもあるホレス・ウォルポールが、1754年のこの日、友人に宛ててしたためた書簡のなかで、幼少期に愛読したおとぎ話のタイトルをもとにした造語として、初めてこの言葉を使ったのだという。

というわけで本日は「セレンディピティの日」。
……とかいいつつ、使いこなせている自信はないのだが、その要素が含まれている気がしたマンガを紹介する。成田美名子の『エイリアン通り(ストリート)』だ。

舞台はロサンゼルスの高級住宅街・ビバリーヒルズ。
スポーツも頭も容姿も最高(だが、性格は少々ひねくれている)な大学のプリンスであるシャールと、彼の同居人や友人との交わり、さらに訳アリの生い立ちを描いていく。
冒頭のエピソードにて、メインキャラクターのひとり・ジェラール(愛称ジェル)は、シャールの秘密を追ううち、彼が自宅で行っていた抗生物質の研究中に、偶然発見した金属を短時間で腐食させる「新種のカビ」をめぐる騒動に巻きこまれる。

「セレンディピティ」は、自然科学の世界でも「たゆまぬ研究心による、偶然からの発見」「失敗からでも学び取れば成功につながる」などの意味あいで使われ、アレクサンダー・フレミングによる、混入した青カビからの抗生物質ペニシリンの発見などが代表例とされる。
ただし、『エイリアン通り(ストリート)』のセレンディピティはそれだけではない。カビ騒動をきっかけに、ジェルはシャールの親友となりまっすぐな言動でシャールをいやし、ジェルも新しい世界を知る。また、シャールと仲違いした家庭教師のセレムが、飛行機事故にあった折に、差別主義者の女性の考えをあらためさせ、自分自身もつくりあげていた心の壁に気づく……などなど、様々な偶然から、よい方向へ導かれていくエピソードが多い。

困難にあっても望みを捨てない明るさや、人の気持ちをくもうとする洞察力などで、幸せをつかんでいる。それこそ、おとぎ話のように。
これは彼らの「セレンディピティ」がなせる業ではないか。

『エイリアン通り(ストリート)』は80年代のハリウッド映画が華やかなりし頃に連載され、ヒット作へのオマージュもあふれるにぎやかなストーリーだ。
同著者が現在連載中の『花よりも花の如く』での、しっとりした「能」の世界とはずいぶん違う印象だが、根本のところでは通じるものがある。哲学めいた深い教えをさりげなく、少女マンガの美麗な世界のなかに織りこんでいる。

余談だが『エイリアン通り(ストリート)』には、次回作にあたる『CIPHER』の主人公もこっそりとカメオ出演しているので、ファンならばぜひ探してみてほしい。



<文・和智永 妙>
「このマンガがすごい!」本誌やほかWeb記事などを手がけるライター、たまに編集ですが、しばらくは地方創生にかかわる家族に従い、伊豆修善寺での男児育てに時間を割いております。

単行本情報

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