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『永遠の一手 -2030年、コンピューター将棋に挑む-』 上巻 伊藤智義(作) 松島幸太朗(画) 【日刊マンガガイド】

2017/02/01


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『永遠の一手 -2030年、コンピューター将棋に挑む-』


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『永遠の一手 -2030年、コンピューター将棋に挑む-』 上巻
伊藤智義(作) 松島幸太朗(画) 秋田書店 ¥600+税
(2017年1月6日発売)


2020年、オリンピック開催に沸き立つ東京で、もうひとつ極限レベルの戦いが行われた。
将棋界史上最強、「神」と称される名人・羽内将史と、将棋ソフト界の頂点に君臨する「彗星2020」による夢の対局。
その対決は大方の予想を裏切り「彗星2020」の勝利で幕を閉じる。

羽内は将棋界を潰してしまった責任を感じ失踪。そして「彗星2020」の開発者もまた、自分のソフトによって名人を打ちのめしてしまったショックで行方をくらましてしまう。
その日から将棋界は大きく変わった……。

「週刊少年チャンピオン」で短期連載された本作は、けっして遠くはない近未来を舞台に、もはやまったくの空想だとはいい切れなくなった「将棋」と「コンピューター」による激闘を描いている。

羽内名人の敗北を機に、将棋界はコンピューター主導の世界に変化してしまった。
人間よりもコンピューターが強いのが常識で、プロ棋士もソフトの力を借りて勝利することをいとわない。

そんな時代をよしとはしないひとりのプロ棋士がいた。彼の名前は増山一郎。
とある理由でコンピューター将棋をうけつけられない体質の一郎は、人一倍努力を重ねて強くなる道を選ぶ。そしてソフトメーカーとプロ棋士のタッグ戦が主流となった新名人戦において、無所属のまま名人位を獲得し、快進撃を続ける。

一方、羽内名人に勝利したあとは、まったく目立たないソフトとなった「彗星2020」。その開発元である彗星社は、起死回生をかけて若干中学3年生にして学生プログラミングコンテストの優勝者である増山翔子をメインプログラマーに迎え入れる。

……えっ、「増山」?
そう、彼女は一郎のひとり娘。

こうして新名人戦は、壮大な親子ゲンカにまで発展していくのだった。

それにしてもなにゆえ、コンピューター嫌いの名人の娘が天才プログラマーなのか?
意外な背景は上巻と同時発売の下巻で明かされる。また、この事実は2020年の歴史的一戦の裏側と、そこから起こった将棋界変革の真相にもつながっていく。

そして2030年、永世名人位獲得をかけた一郎の前に立ちはだかるのは、翔子のソフトによって「神」と呼ばれた頃の棋力を取り戻した羽内だった。
2人の棋士のプライド、そして将棋界の未来がかかった一戦のゆくえは……。

「将棋」そして「コンピューター」という2つの題材を通して、本作で描かれているのは「人間」の強さ。逆にいえば、この作品から熱気を受け取るのに、題材じたいへの造詣はまったく必要ない。
何かを愛し、何かを究めようとする人間たちの強さや美しさがつめこまれたひとつの「マンガ」として熱い。

近未来を舞台としながら、地道な努力で強くなる一郎の姿は、どちらかといえば昔ながらの少年マンガの主人公に近い。
完璧ではないけれど、だれよりも将棋を愛するひたむきで熱いヒーロー。
一郎が救うのは将棋界か、将棋を愛する人々か。それとも、それらをひっくるめたすべてか。

短期連載ならではのスピーディーかつ高密度な展開でたどりつく、「永遠」の先にある未来をぜひ確かめていただきたい。

また、大人顔負けの天才ながらふだんは純真無垢な少女である翔子のかわいらしさも、この作品を支える重要な要素のひとつ。
彼女が主役の特別編も、下巻に収録されている。
こちらは将棋とは無関係のストーリーだが、コンピューター技術が進化した世界の裏側をのぞき見ることができる。



<文・ササナミ>
「雑食商店街3373番地」というマンガ感想メインのブログを書いております。ふだんは書店で働いています。
渡辺航先生ファンで、『弱虫ペダル』第1話掲載号からの「週刊少年チャンピオン」ファンです。

単行本情報

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