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『金魚妻』 黒澤R 【日刊マンガガイド】

2017/02/22


日々発売される膨大なマンガのなかから、「このマンガがすごい!WEB」が厳選したマンガ作品の新刊レビュー!

今回紹介するのは、『金魚妻』


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『金魚妻』
黒澤R 集英社 ¥600+税
(2017年1月19日発売)


金魚妻。24歳の平賀さくらは、さみしかった。金魚がほしかった。
出前妻。29歳、岡崎杏奈。蕎麦屋に嫁入りした彼女は、出前先の男性の家にあがっていた。
弁当妻。27歳の保ヶ辺朔子(ほかべ・のりこ)は、夫の寝取られ趣味に振りまわされていた。
見舞妻。23歳の川北真冬は15歳で子どもを産んだヤンママ。ある日学校の先生を飲酒運転で、ハネてしまう。

4人の妻たちの不倫模様をおさめた短編集。
悲壮感はない。
女性たちが幸せになろうとする、ポジティブな不倫の物語ばかりだ。

たとえば「金魚妻」のさくら。
夫に日々冷たくされ、金魚を飼うといっても、全然とりあってくれない。
彼女は、夫が若くてきれいな子と浮気しているのを、はっきりわかっている。
すさみきった彼女は、金魚屋の優しい店長のあたたかさに触れる。
そこから、体を重ねるまではあっという間だった。

彼女が見ていたある金魚は、最初ボロボロだった。
しかし、どんどん元気になっていく。さくらはそれを見て笑顔になる。
さくらと金魚が重なる。不倫を通じて、彼女は自分の命を取り戻したかのようだ。

不倫はもちろん、よいことではない。
ただ、家庭の束縛のなかで苦しみ、あまつさえ夫に相手にされていない時。不倫に一筋の幸せを求め、活力を得てイキイキとする様は、たくましい。別に相手の男性を利用するわけでも、夫をだますわけでもなく、生きる術のようだ。

「人が金魚を作っていくのではなく 金魚自身の目的が 
人間の 美に惹かれる一番弱い本能を利用して 
着々目的のコースを進めつつあるように考えられる」
本文内で引用される、岡本かの子『金魚撩乱』。
金魚のように水槽に入った妻たちは、男性たちの美に惹かれる本能を知らぬ間にたぐり寄せて、それをエネルギーに変えて、明日も生きようとする。



<文・たまごまご>
ライター。女の子が殴りあったり愛しあったり殺しあったりくつろいだりするマンガを集め続けています。
「たまごまごごはん」

単行本情報

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