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【インタビュー】稚野鳥子『月と指先の間』 漫画家人生30年の稚野先生がいま語る、少女マンガ界の光と闇とは……!?

2017/05/27


人気漫画家のみなさんに“あの”マンガの製作秘話や、デビュー秘話などをインタビューする「このマンガがすごい!WEB」の大人気コーナー。

今回お話をうかがったのは、稚野鳥子先生!

月2~3本の連載をかかえる生活を30年以上続け、仕事や人生もベテランの域に突入している、55歳の女性漫画家・御堂アン。
彼女がワケあり彼氏や、苦手な編集長に悩まされながらも、マンガを描き続ける日々を描いた『月と指先の間』は、働く女性のありのままの姿を描いた点が年齢問わず女性からの共感を呼び、「このマンガがすごい!2017」オンナ編の13位にランクインしました。

これまで、『東京アリス』(講談社)、『クローバー』(集英社)で“働く女性”を主人公にマンガを描いてきた稚野鳥子先生ですが、
少女マンガ界の第一線で活躍してきた稚野先生からみた、少女マンガ界の変化や、意外な経歴などについて、お話をおうかがいしました!

著者:稚野鳥子

女子美術短期大学(現・女子美術大学短期大学部)卒業後、デザイナーやイラストレーターなどで経験を積み、 その後「ぶ~け」(集英社)にて漫画家デビュー。

著書に『クローバー』(集英社)『東京アリス』(講談社)など。

最新第3巻となる、『月と指先の間』が絶賛発売中!

Twitter:@torikochiya

少女マンガ界のバブル期を描きたいという狙いがありました

――まずは、「このマンガがすごい!2017」オンナ編13位ランクイン、おめでとうございます。

稚野 ランキングに入ったと聞いたときはうれしかったです! これまで、こういったランキングに入ったことがないんですよ。

——『クローバー』(集英社)にしても『東京アリス』(講談社)にしても大ヒット作ではありましたが……。

稚野 いわゆるマンガ通や、斬新な作品を発掘しようっていうタイプの読み手にひっかからない人間なのかなと思ってたので、今回のランクインはうれしいです。私が描いてるのは普通の女性の恋愛話なので、話題にのぼりにくいんでしょうね。そういう気持ちもあって新連載立ち上げのとき、ちょっと違うタイプの話を描いてみようと思いました。

——漫画家マンガは多々ありますが、ヒロインが55歳というのは驚きでした。

稚野 『東京アリス』はヒロインが26〜31歳くらい、『クローバー』は21〜27歳くらいの期間を10年以上かけて描いています。かつてはアラサーの人たちの話ってあまりなかったんですけど、今ってすごくいっぱいあるじゃないですか。 それを今さら私が描かなくても、と。また、私がデビューするちょっと前の、少女マンガ界のバブル期を描きたいという狙いがありました。それで、アン先生を私よりも高めの年齢にしたんですけど。

——少女マンガ界のバブル期!? 世の中のバブルとも重なる時代ということですよね?

稚野 そうです。出版社のパーティの2次会に、アイドルや芸人さんが呼ばれたりしてたそうですよ。残念ながらわたしはその最高にバブルな時期を経験してないんですが、私がデビューした頃でも今より格段にパーティは豪華で。パーティ自体、毎回コンセプトがあったり。
テーマが「天使」なら会場もそれにあわせた演出がされてて、編集さんもコスプレして。抽選会で特賞が当たって海外に2回行かせてもらったりしましたね、しかも描いていない出版社のパーティで。

——うわぁ、なんと景気がいい!

稚野 パーティについてはたくさんおもしろい話があるんですよ。これ、都市伝説かもしれないけど……某社はかつて男の漫画家さんと女の漫画家さんのパーティを別々にしてたとか。なぜかというと、パーティでカップルがたくさんできたおかげで、同じ雑誌の女性作家さんが同時期に妊娠しちゃって連載陣が困ったことがあるとか(笑)。

——うわぁ、本当にありそう!?

稚野 昔、少女漫画家同士がある編集さんをめぐって熾烈に争ったから、少女漫画家の担当になるのは背の低い人や、太った人だとか。でも、あくまでこれは都市伝説ですよ。ちゃんとカッコいい方いますから。某社は漫画家と編集さんとの結婚はOKだけど、某社はダメとか……。

——そういう裏話、めっちゃ知りたいです!

稚野 こういうネタを描いてみたいんですよね。まずは私がデビューした頃、少女マンガ界は華やかな世界だったということを描きたいですね。

——そういうバックグラウンドこみでの企画だったんですね!

稚野 55歳のアン先生はマンガ界の栄枯盛衰を知っている世代。描けばバンバン売れた時代も、紙媒体が苦しくなって電子書籍もありというマンガの過渡期も経験して戦っているという人にしたかった。

読切集のコミックスのサイズをB6版で希望したものの、新書版で出そうとする販売部と衝突してしまう。

読切集のコミックスのサイズをB6版で希望したものの、新書版で出そうとする販売部と衝突してしまう。

——読者が読んでもっとも気になるのは、アン先生のモデルは稚野先生ご本人であろうと、そしてどこまでがリアルなのか、ということですが。

稚野 自分が体験したことも描いてますから、モデルと思ってくださってもかまいません。でも、聞いた話を織りこんだりふくらませてもいますし、もちろんフィクションもあります。アン先生には私の要素は入ってますけど、やっぱり描いていくうちに違うキャラになっていきましたね。

——体験と伝聞、フィクションのミックスというわけですね。

稚野 私の周囲には少女漫画家がたくさんいますのでネタには困りません。読者の方が少女漫画家さんにズバリ聞きたいようなことを描きたいですね。たとえば少女漫画家が主人公っていうと、漫画家さんに恋愛経験がなくてうまく恋愛マンガが描けないという話がよくありますよね。
で、担当さんがイケメンのドSで、恋愛シミュレーションを……みたいな。それは100パーセントフィクションですから。

——本作ではベテラン作家ならではの視点が描かれるのも興味深いです。

稚野 漫画家になる夢がかなってハッピーエンド……とはいかないですからね。私のアシスタントさんでデビューしていった子はたくさんいても、実際やめていった人が多いです。

「漫画家はなるより続ける方がずっと難しい」 30年近い漫画家人生を歩んできた稚野先生だからこそいえる、重みのある言葉だ。

「漫画家はなるより続ける方がずっと難しい」 30年近い漫画家人生を歩んできた稚野先生だからこそいえる、重みのある言葉だ。

——デビューがゴールではなくて、その先が問題なんですね。

稚野 なんでもそうだと思うんですけど、漫画家になるより続けるほうが難しいですから。私のまわりのずっと続けてる人たちはすごく濃いので、彼女たちもモデルにできたらいいなと。長く続けるなかでの苦悩もありますよ。たとえば読者さんから昔の作品、あの頃の絵柄が好きでしたといわれると落ちこむこともあります。作家としては今の作品が一番っていわれたいんですよね。 描き続ければ絵がうまくなるというわけでもない。視力は低下するし、手がダメになったりする人もいる。そういう事情も伝えてみたいです。

おとめちっくブームや『キャンディ・キャンディ』にハマって……

——では、稚野先生ご自身の“漫画家キャリア”についてうかがっていきたいと思います。子どもの頃に好きだったマンガは?

稚野 最初にすごく好きになったマンガは『ド根性ガエル』(集英社)でしたね。小山ゆう先生の『おれは直角』(小学館)とか、『ドカベン』(秋田書店)とか。

——えっ、めちゃくちゃ男っぽいじゃないですか(笑)。少女マンガを読む前に、少年マンガを読んでいたとは。

稚野 兄がいたので、彼の影響で「ジャンプ」(集英社)、「マガジン」(講談社)、「サンデー」(小学館)も「チャンピオン」(秋田書店)も読んでました。

——おぉ、それは少年マンガエリート環境ですね。

稚野 幼稚園くらいの頃には『キャプテンハーロック』(秋田書店)とか『宇宙戦艦ヤマト』(秋田書店)『サイボーグ009』(秋田書店)あたりも読んでいて、松本零士先生の絵を模写してましたね。『キャプテンハーロック』には女キャラが足りないなと思って、自分で女キャラをつくってそこに入れこんだり。

——少女マンガに目覚めたのはいつごろですか?

稚野 小学校5年くらいですね。「りぼん」(集英社)を読み始めて、陸奥A子先生とかのかわいらしいマンガに出会って。おとめちっくブームや『キャンディ・キャンディ』(講談社)にハマって……いがらしゆみこ先生調の絵を描きまくりましたね。

——ハマると模写するタイプだったんですね。

稚野 鈴木光明さんの『少女まんがの描き方専科』(白泉社)という本に衝撃を受けたのもその頃です。この本にはエピソードのつくり方やヒキのつくり方も載っていて、「マンガってこうやって描くんだ」とワクワクしました。といっても、まだ家にあった万年筆で絵を描いてるレベルでしたけど。Gペンに似てるしいいかなと(笑)。

——いよいよ少女マンガの大海にこぎ出した感じですね!

稚野 まだまだですよ。中学生になるとコマ割りしたマンガを描いてる人がいたので「私も!」と思って雲形定規を買ってみたりしたけど、マンガを描くところまではいきませんでした。読むほうでは岩館真理子先生、萩尾望都先生、萩岩睦美先生のマンガに夢中になって……それから吉田秋生先生とかくらもちふさこ先生も。

——やっぱり絵柄を模写したり?

稚野 岩館真理子先生のふわふわした絵の感じがすごく好きだったんですけど、あの絵はなぜか真似できなかったんですよ。すごく難しい。でも当時真似する漫画家さんが多くて、編集さんに皆真似するなといわれてました。
とはいってもあいかわらず自分の絵柄はつくれず、コマも割れない。お話や設定を考えてちょっと文章で書いてみたりする程度です。

単行本情報

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