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中島三千恒『軍靴のバルツァー』インタビュー【後編】 男装ヒロインは最初から決まっていた!?【総力リコメンド】

2014/12/16


細部にまでこだわったつくりこまれた世界観が読者を魅了する『軍靴のバルツァー』。緻密に描きこまれた銃器や建築物、圧巻の戦闘シーンはどのようにして誕生するのか? また、「月刊コミック@バンチ」のヒロイングラビアコンテストで1位に輝いたヒロイン・ヘルムートの誕生にまつわる秘話とは!? 興味深い裏話が次々と登場するインタビュー後編、始まります!

中島三千恒

女性。歴史、特に『赤壁ストライブ』(メディアファクトリー)など三国志を題材にした作品を多く手がける。現在、「月刊コミック@バンチ」(新潮社)にて『軍靴のバルツァー』を好評連載中。
Twitter:@mititune_n
ブログ:雪中送炭

『軍靴のバルツァー』は、新しい武器や戦術を主人公がプレゼンするマンガ!

――『軍靴のバルツァー』を読んでいると、じつに細かな部分まで世界設定が構築されているように感じます。連載開始前までに、どの程度作りこんでいたのでしょう?

中島 ストーリーに関係ない部分は、そんなには作り込んでなかったです。まず最初にカッチリと固めたのは学校の部分。それから、作中でネタにする部分の設定を決めていきました。たとえば1巻だと、ライフル銃対マスケット銃の戦いをやるつもりだったので、じゃあ軍学校の基本装備はマスケット銃や後装銃がいいな……とか。

――まず描きたいネタがあって、それから設定を固めていく順序なんですね。

中島 そうです、鉄道の話(敷設とかレールの幅など)は絶対にやりたいと思っていたんですよ。だから派遣先の国(バーゼルラント)は鉄道や電信は敷設前という設定にしよう……と。

「バルツァーやるな!」と読者が思わずうなったエピソード。日露戦争でも日本陸軍がレール違いで、進行の際に特注車両を運用している。

「バルツァーやるな!」と読者が思わずうなったエピソード。日露戦争でも日本陸軍がレール違いで、進行の際に特注車両を運用している。


――そのあたりの設定は決まっていたから、第1話で「国境からは鉄道もなく……」と説明されているわけですね。

中島 「絶対使いたいネタ」まわりの設定は事前にカチッと決めてましたが、それ以外の部分はフワッとさせておきます。フワッとさせておいた部分は、読者や編集さんの反応を見て徐々に固めていく感じですね。

――その「描きたいネタ」を選ぶ判断基準は、どこでしょう?

中島 資料を読んでいて、自分がプッと吹き出したところですね。「これおもしろい!」「これウケる!」って思ったところです。後世だからこそ笑えるような、間抜けな行動や出来事を積極的に使ってます。だから「ダメな王族がいる」というネタも、最初から決めていた設定ですね。

ダメな王族といえばこの人、バーゼルラント第一王子! バルツァーも度肝を抜かれた中世仮装趣味オタク。これも心の闇がなせるものなのか……。

ダメな王族といえばこの人、バーゼルラント第一王子! バルツァーも度肝を抜かれた中世仮装趣味オタク。これも心の闇がなせるものなのか……。


――思わずだれかに教えたくなるようなネタ、といったところでしょうか。

中島 「こういうのを描きたい!」ってネタは、じつはかなりストックがあります。それをどうやって物語に組みこんでいくか、思案しているところです。もっと増やしていきたいんですよ。

――実際、連載が開始してからの読者の反応はいかがでしたか?

担当 連載開始前は、そこまで予測してませんでした。僕は好きなんですけど、けっしてオーソドックスな作りの作品ではない、と当初は思っていましたから。軍とか大砲とか、そういったネタに食いついてくれる読者がいればいいかな、と。

中島 雑誌の隅っこにひっそりと載っていればいいかな、ってマンガとしてスタートしました。

担当 でも連載がスタートして、すぐに反響がありました。先ほど言ったオーソドックスな部分、つまりおもしろいストーリーとか魅力的なキャラクターといった部分がしっかりしているので、軍事ネタが好きな読者以外からも支持されたんだと思っています。

――中島先生は、どのあたりで手応えを感じましたか?

中島 1巻の4話から5話のあたりで、「やりたいことができたな」って思いました。

――マスケット銃対ライフル銃の場面ですね。

中島 新しい武器や戦術のプレゼンテーションを主人公が実演していくマンガ、という型ができたように感じました。

バルツァー最初の活躍となるマスケット銃VSライフル銃のシーン。圧倒的不利をくつがえすバルツァーに生徒も読者も心をわしづかみにされた。

バルツァー最初の活躍となるマスケット銃VSライフル銃のシーン。圧倒的不利をくつがえすバルツァーに生徒も読者も心をわしづかみにされた。


――それは中島先生がマンガを描き始める動機の部分(好きな題材や人物のプレゼンテーション)にもつながる部分だったわけですね。ただ、連載開始当初は、もっと短い物語の予定だったとお聞きしましたが?

中島 私は、全2巻で話をたためるように考えていました。担当さんは、「人気なくても4巻くらいまでは気長に続けるよ」って言ってくれたんですけど、私としては人気がなければ2巻で終わるつもりでした。

――その場合は、どういう構想で?

中島 1巻で実演(マスケット銃対ライフル銃)をし、王族の兄弟間で後継者争いの内紛が勃発し、2巻でそれが決着。軍事顧問のおかげでうまくいきました、それと同時に軍学校も変わりました、完。みたいな感じです。

――かなり早い展開ですね。

中島 この時代の戦争って、たとえば普墺戦争【注1】は「七週間戦争」と呼ばれているように、短期で決着がつくのが特徴です。だから、短いなりの描きかたをしていこう、と思っていたんです。

――短いなりの必然性のある内容。

中島 だから描きたいネタもドンドン放り込んでいって。〝斉射砲〟のネタも、当初はここで使うつもりでした。

――〝斉射砲〟って5巻で使うやつですよね? ということは、かなり初期からアイデアとして温めていたんですね。

担当 幸いにも1巻の評判がよかったので、「長く続けましょう」となりました。

中島 なので〝斉射砲〟は、あのタイミング(4巻第18話)での登場になったんです。


  • 注1 1866年にロイセン王国とオーストリア帝国との間に勃発した戦争。急速に戦争が終結したことから「七週間戦争」とも呼ばれる。この戦争によりプロイセンを中心としてドイツ統一が進められることになった。

単行本情報

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