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田島列島『子供はわかってあげない』インタビュー【後編】 キャラクターと一緒にマンガを作っていく 

2015/01/19


味わいのあるゆるふわタッチとちょっとクセのあるセリフまわしで、すこし不思議でとっても心地いい作品世界を作り出す田島列島先生。じわじわと中毒者を増やしていく魅惑の田島マンガはどのように生み出されるのか? ここに田島列島流のマンガ術を大公開!

前編はコチラ!
新感覚ボーイミーツガール!甘酸っぱすぎるひと夏の大冒険!!  田島列島『子供はわかってあげない』インタビュー【前編】

著者:田島列島

「田谷野歩」のペンネームで「モーニング」(講談社)に読み切り『ごあいさつ』『官僚アバンチュール』を発表。
2014年の「モーニング」本誌における「田島列島縦断ツアー」から「田島列島」名義に変更。その後、『おっぱいありがとう』『お金のある風景』『ジョニ男の青春』と読み切りを次々と発表、2014年に『子供はわかってあげない』で連載デビューを果たした。

キャラクターに相談!? 田島列島流、ストーリーの作りかた

――内容についておうかがいしていきます。タイトルは先生がお考えになったんですか?

田島 ネーム段階でもう決めてました。

1話のネームに味わいのある手描きで描かれたタイトルとサブタイトル。担当も脱帽したばつぐんのインパクト!

1話のネームに味わいのある手描きで描かれたタイトルとサブタイトル。担当も脱帽したばつぐんのインパクト!

担当 いいタイトルですよね。漫画家さんのなかには、各話のサブタイトルをつけるのが苦手な方もいて、そういう場合は編集者が考えるのですが、田島先生は言葉のチョイスが本当にうまい。タイトルもサブタイトルも、すべてネーム段階から一言一句いじってません。

――タイトルは先に決めていたんですか?

田島 そうですね。最後に帳尻を合わせました、副題で。まあ、みんなわかってあげているので(笑)

――ストーリーはどうやって考えたのでしょうか?

田島 「お父さん探し」と「新興宗教」があって、そして軸が「恋愛」と考えていました。三題噺[注1]みたいに。

――なぜその3つなのでしょうか? 「お父さん探し」や「恋愛」は、マンガの題材として理解しやすいと思います。あるいは「新興宗教」をメインにした話もあると思いますが、その3つの組み合わせの妙味というか。なぜ「お父さん探し」と「恋愛」のところに「新興宗教」が入ってきたのでしょうか。

田島 もとから興味あったんです。世代的に、思春期にオウム真理教事件[注2]を題材にした作品を見てきたことが影響しているとは思います。大学は映像学科だったのですが、同級生はみんな森達也さん[注3]のノンフィクション作品が好きでしたよ。

――絵柄からは想像してませんでしたが、社会派ドキュメンタリーに興味があるんですね。

担当 受賞直後(2009年頃)に作っていたネームで、それは原稿にはなっていないんですが、原発事故を題材にした作品もありました。

――バリバリの社会派、みたいな?

担当 いや、作風は今の田島先生と似ていますよ。ホンワカした感じは。その時は、JCOの臨界事故[注4]を取材するために東海村まで行きました。

――かなり本格的じゃないですか。

田島 大学を出たばかりの頃は、そういうのをやろうと思ってました。でもなんか、うーん、限界があるような気がして……。

担当 自分が描ける範囲に?

田島 そうですね。なんか違うな、と。

――ストーリーとキャラクターはどちらを先行して決めていきます?

田島 初めに柱(「お父さん探し」「新興宗教」「恋愛」)を決めておいて、それからキャラクターを作りました。柱を肉付けしていくのはキャラクターと一緒にやる、という感じです。キャラクターに相談しながら進めていきます。

――キャラクターに相談する、というのは具体的にどういうことでしょう?

田島 相談するというか、「こいつはコレをやらないだろう」ということを考えながら進めていく感じです。

――具体的にモデルとかいます?

田島 いや、そういうのはないです。

担当 僕はデビュー以来、田島先生の担当ですが、朔田さんと明ちゃんは「これぞ田島列島キャラ」という感じがします。飄々としていているというか、颯爽としているというか、それでいていいことを言う。

門司くんが「ひんまがってない」と評したサクタさん(右)と、門司くんの兄で今は女性の商店街の探偵・明ちゃん(左)。

門司くんが「ひんまがってない」と評したサクタさん(右)と、門司くんの兄で今は女性の商店街の探偵・明ちゃん(左)。

――作中に出てくる子どもが、すごく魅力的です。

田島 あ、子どもに関しては、実際に見た子がモデルになってます。実家では父が左官屋をやっていて、それを少し手伝っていたことがあるんです。左官屋さんって、よそのお家に行くことが多いんですよね。行った先の家で触れあった子どもたちです。いきなりクイズを出してきたり、「オレのパンチを受けてみろ」「オレはレベル530」とか(笑)

――ハルオだ! 仁子ちゃんがぐねぐねするのとか、それまでマンガでは見たことがなかったけど、たしかに子どもってあんな感じですよね。

サクタさんの弟、ハルオ。この脈略のない攻撃とか謎のハイテンションとか子どもあるあるすぎる。

サクタさんの弟、ハルオ。この脈略のない攻撃とか謎のハイテンションとか子どもあるあるすぎる。

田島 照れて変な感じになったり、寝ている時にどんどん足が上がっていったり。

――左官屋さんのお手伝いをしている時の子ども観察が、作品に活かされたんですね。田島先生、いろいろなお仕事を経験されてるようですが。

田島 左官屋とか本屋とか、あと絵画教室で絵を教えるのを2カ月くらいとか。とにかく、いろいろやりました。

――というか、ご実家が左官屋さんだから「魔法左官少女バッファローKOTEKO」というネタが生まれたんですね。

サクタさんと門司くんが仲よくなるきっかけにもなった「KOTEKO」。KOTEKOの小ネタマンガおもしろいのでもっと読みたい。

サクタさんと門司くんが仲よくなるきっかけにもなった「KOTEKO」。KOTEKOの小ネタマンガおもしろいのでもっと読みたい。

担当 小ネタはホント多いですよね。

――ちなみにジョニーは、なぜ馬になったんでしょうか?

田島 うーん……、そうですね……恋愛ものを描くにあたって、ああいうものを描かないと、恋愛を描いたことにならないような気がしてました。なんていうか……なんだろうな。象徴的、というか……、ああいうのを描いておきたかったんです。

第14話で突然登場したジョニーという名の暴れ馬。恋も青春もノンストップ!

第14話で突然登場したジョニーという名の暴れ馬。恋も青春もノンストップ!

――恋心を暴走する馬に例えるって、すごいですね。

田島 それで第18話の副題は「ジョニーの遺言」にしたかったので、馬の名前はジョニーにしました。これ、連載が終わってから夢占いで調べたんですが、馬って「恋愛運の上昇」を意味するらしいです。知ってて描いたわけじゃないんですけど、なんか、そういうことなのかなぁ、と。


  • 注1 客席からお題を3つもらって、即興で一席の噺をするという落語の形式のひとつ。
  • 注2 オウム真理教事件 新興宗教団体「オウム真理教」(現「アレフ」)が1980年代後半から1990年代にかけて起こし、世間を震撼させた一連の事件の総称。坂本堤弁護士一家殺害事件、松本サリン事件、地下鉄サリン事件などが代表的な事件。
  • 注3 森達也 ドキュメンタリー映像作家。オウム真理教の信者を題材にしたドキュメンタリー映画『A』(1999年)、『A2』(2001年)で監督を務める。ドキュメンタリーの著作も多い。
  • 注4 JCOの臨界事故 1999年9月30日に茨城県那珂郡東海村の原子力発電所で起きた原子力事故。JCOの核燃料加工施設内で発生し、国内最初の事故被曝による死亡者を出した。

単行本情報

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