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『弟の夫』田亀源五郎インタビュー ゲイコミックの巨匠が“ホームドラマ”のなかに盛りこんだ、ヘテロへの「挨拶」と「挑発」

2016/01/18


作中のトリックスター・夏菜の“子どもらしい”かわいさ

——作中ですごく重要な役割を担っているのは、娘の夏菜だと思うんです。
主人公の弥一がマイクと接するときに「本音と建前」を使い分けているコマがあるじゃないですか。あれでドキッとさせられる部分はあるんですけど、もし夏菜がいなかったら、弥一は「本音」の部分だけでマイクを突っぱねていたかもしれない。娘への説明責任を果たそうとする親としての意識が働いているから、物語が動くんじゃないかと思ったんです。

田亀 ありがとうございます。

——それで夏菜を描くにあたって、モデルとかはいたのでしょうか?

田亀 モデルはとくにないんですけど、ただ「ヘテロ男性に読んでもらうには、一にも二にもかわいい女の子だろう」とは思ってました。すごくいやらしい話ですけどね(笑)。でも、かわいい女の子を描くことに、あんまり自信がなかったんです。それまで女子児童を描くことなんて、ほとんどなかったですから。皆無……だと思っていたら、このあいだ偶然過去に描いた1コマだけ、夏菜っぽいキャラを見つけましたけど、でも、ほぼ皆無ですよ。
だから編集さんには「ブスの女の子じゃダメ?」って聞いたんですけど、「いや、そこはかわいい子でいきましょう」と言われてしまって(笑)。

——(笑)。

田亀 だからかわいい女の子を描く練習をしたり、世のなかにあるマンガを参考にしました。
そのなかですごく参考になったのは、『銀のニーナ』でした。

——「漫画アクション」に連載している作品ですね。

『弟の夫』の重要なキーパーソンともいえる夏菜の創作は、田亀先生も四苦八苦。そのイメージとして参考にしたのがこのニーナだった。

『弟の夫』の重要なキーパーソンともいえる夏菜の創作は、田亀先生も四苦八苦。そのイメージとして参考にしたのがこのニーナだった。

田亀 夏菜に関しては「萌え」にはしたくなかったんです。子どもとしてのかわいらしさ、女の子としてのかわいさをおさえつつ、セクシャルなほのめかしとか、色気はいっさい入れたくなかった。
『銀のニーナ』の女の子は、女の子としてのかわいさを描きつつも、「萌え」にはふれていないんですよね。
だから『銀のニーナ』を作画的にまねるということではなく、この路線でいこうと決めた点では、すごく参考になりました。

——やっぱり「萌え」にはセクシャルな要因が、少なからず入っていますよね?

田亀 入っていると思います、私は。それが暗喩であろうと。
でも女性を描く際に、なんらかの形でセクシャルな要素が入るのは、男性作家からしたら当たり前のことだと思います。ただ、同じく「かわいい」という言葉で言いあらわされるけれど、私が昔から接してきた、女子児童向けのキャラグッズとか挿絵とは、いまの「萌え」はやっぱり違いがあるな、とは感じています。

——挿絵というと、少女誌的な?

田亀 いや、いまおっしゃったのは、中原惇一とか内藤ルネあたりを想定してのことだと思うんですけど、それはそれで「女の子が理想とするお姉さん」的であって、また違うんです。
しいてあげるなら……うーん、そうだなぁ、松本かつぢさんの『くるくるクルミちゃん』とかになるのかな? 私もリアルタイムで読んでいた世代ではないですけど。

——いずれにせよ夏菜は「萌え」ではない、と。

田亀 私は「萌え」に関しては素養もないので、描けないと思います。ポーズにしろアングルにしろ。夏菜に関しては、子どもに期待されるような無意識な色気はいっさい省くようにして、女の子らしさを強調させるような服は着せないとか、注意してます。
姿形は女の子だけど、意識はまだ女性ではない。キャラクターのなかに、性別の要素のない子として描きたかったんです。こういう表情(※下のカット)とか、子どもってするじゃないですか。

田亀先生が夏菜を描くにあたって、注意した「子どもらしい表情」。いぶかしくメモを見つめる、このあどけなさがポイントだと話す

田亀先生が夏菜を描くにあたって注意した「子どもらしい表情」。このあどけなさがポイントだという

——します、します。あと子どもって、言動にしても行動にしても、乱暴というか、ちょっと暴力的なところがありますよね。だからこそ「どっちが旦那さんでどっちが奥さんだったの?」と聞けちゃう。

田亀 そうそう。ここでそうくるか、みたいなところはありますよね。ああいうおもしろさが、出せたらいいですよね。

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