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雲田はるこ『昭和元禄落語心中』インタビュー 祝☆アニメ化!! アニメ版の影響で“あの”キャラクターに変化が!?

2016/01/30


年を取るキャラクターと 経年変化へのこだわり

――落語家さんって、舞台の上では陽気な方が多いですよね。

雲田 そうですね、幇間のようなイメージを持ってる方も多いですよね。

――ただ、彼らにもかなり苦悩があるんですよね。客の立場からはなかなか気づかないんですが。

雲田 そういうのはいっさい出さずに、隠すそうですね。実際、自殺されてしまう方も少なくないですし、いろいろな方の芸談やエッセイを読んでも、じつはたいへんな世界なんじゃないかと想像してました。

――本作では、そういった落語家の暗い側面にもスポットを当てました。

大名人と讃えられる八雲も肉体が衰え満足に芸ができなくなることの恐怖に震え、苦悩する。

大名人と讃えられる八雲も肉体が衰え満足に芸ができなくなることの恐怖に震え、苦悩する。

雲田 ただ陽気で楽しいだけじゃなくて、悲喜こもごもいろいろなところがあるのを描きたかったんです。マンガやドラマ、映画も、落語ものの名作はたくさんありますが、わりとホームドラマっぽいものが多かったんですね。弟子がたくさんいて、疑似家族的な。それもすごく素敵なんですが、私は落語から別の側面も感じることが多々あったので、そっちを描いてみようと思いました。

――身内の不幸さえ笑い噺に変えちゃう人たちですけど、すごく闇を感じさせる瞬間もありますしね。

雲田 どなたにもきっと、内面にはドロドロしたものがあるんじゃないかと思います。

――与太郎の表情も、段々深みが出てきてます。

雲田 落語の厳しさや苦労が顔に出る、とはどういうことだろうと思って描いております。

最初は愛嬌だけが取り得のまさに「与太郎(バカで間抜けな男)」だったのに、今やすっかりイイ男! 与太ちゃん、かっこいい~。

最初は愛嬌だけが取り得のまさに「与太郎(バカで間抜けな男)」だったのに、今やすっかりイイ男! 与太ちゃん、かっこいい~。

――それは意図的にやっていることなんですね?

雲田 そうです。強く意識してはおります。

――じゃあ、弟子の小太郎くんも、今はボンヤリしているけど、そのうち精悍な顔つきになるかもしれない。

雲田 かもしれません(笑)。

中央が与太郎の一番弟子・小太郎くん。水木マンガのキャラみたいな小太郎くん、今後、大化けするのか!?

中央が与太郎の一番弟子・小太郎くん。水木マンガのキャラみたいな小太郎くん、今後、大化けするのか!?

――そういった経年変化は、かなり意識して描いてますよね。

雲田 過去編である「八雲と助六編」をはさんで、5巻で再び現代の「助六再び編」に戻りますが、2巻の「与太郎放浪編」から10年くらい経っているんです。

――前座だった与太郎が、真打[注12]に昇進するまでになっている。

あの与太郎が真打に……しかも三代目助六を襲名とか! 展開が神すぎる!!

あの与太郎が真打に……しかも三代目助六を襲名とか! 展開が神すぎる!!

雲田 だからそこでキャラクターの成長や肉体的な衰えを説得力もって見た目に反映させようと、いろいろ試行錯誤しました。たとえば八雲さんをハゲさせてみたらどうだろう、とか。

担当 やめてください(笑)。

雲田 アシスタントさんにも聞いたんですよ、「ハゲだめかな?」って。実際に描いてみたんですけど、そうしたら「絶対ダメです」って言われたので、「じゃあ白髪にするか」って。

担当 白髪になったのも、八雲さんの老いを突きつけられたようでショックでしたけどね。

シルバーグレーの八雲師匠、老いてますます色っぽい。

シルバーグレーの八雲師匠、老いてますます色っぽい。

――まあ、落語ファンって、ひとりの落語家が年老いて死ぬまで、衰えていく過程も見続けますからね。それこそ声が出なくなって、何を言っているかわからなくなっても、高座に上がってくれるだけでうれしい。志ん生(しんしょう)[注13]が高座で居眠りしちゃっても、起こしに来た前座に向かって客が「そのまま寝かせといてやれ」と言ったりする。八雲さんも作中で徐々に年を取っていきますね。

雲田 ねえ。ハゲたりボケてヨダレ垂らしたり……。

担当 切なすぎます。

雲田 「もうショボショボだわー」って(笑)。まあ、そこまで描いちゃうとエンターテインメントとしてどうかと思うので、やりませんけどね。

――登場人物が、みんなちゃんと年を取っているんですよね。

雲田 そこはただただ好きなんですよ。年齢による変化を描くのが。あるいは親子で目元が似ているとか、そういった描きわけが無性に好きなんです。

――描いていて楽しいんですね?

雲田 そうです。「シワの感じをこうすると老けて見えるな」とか、普段から人を観察して「ここがたるむんだな」とか。

担当 作中で時代が飛ぶので、キャラクターの変化を描きたいとおっしゃってましたね。

雲田 おじいちゃんのシワも楽しいですが、子どもの信ちゃんが、赤ん坊から幼稚園に入って、小学生になる変化を描いたりすることも楽しいですね。

小夏の息子、つまり伝説の落語家・助六の孫にあたる信ちゃんは落語界のアイドル。現実にこんな子いたらテレビが放っておかないだろうな。

小夏の息子、つまり伝説の落語家・助六の孫にあたる信ちゃんは落語界のアイドル。現実にこんな子いたらテレビが放っておかないだろうな。

――あの子、かわいいですね。

雲田 アシスタントさんからは「計算高すぎてあざとい」っていわれます(笑)。

担当 でもこれも、絵がうまい人じゃないとできないことだと思います。

――先生、アニメ化にあたって、八雲さんに関しては「通年でひとりの声優さんにお願いしたい」と先生のほうから要望を出したそうですが、そういった意識があるからこそ、アニメでも同じ人にやってもらいたかったんですか?

雲田 それはあります。若い頃とお爺さんになってからで違う声になっていたら、寂しいじゃないですか。落語家さんの声って、年老いてもハリがありますし。実写では難しいでしょうけど、落語家さんと同じく声で勝負なさってる声優さんだったら、もしかしてうまく表現してくださるのではないかなと思いました。

――結果的に石田彰さん[注14]が、すばらしい八雲師匠を演じました。

雲田 もう本当にアニメは、奇跡のキャスティングでした。

●次回予告
いよいよ物語も佳境に! 気になるラストについて次回、雲田先生が語る!?
2月上旬更新予定なのでお楽しみに!


  • 注12 真打 落語家の位のひとつで、真打になると寄席で主任(トリ)をとれる。また、「師匠」と呼ばれ、弟子を取ることも可能に。
  • 注13 志ん生 五代目古今亭志ん生のこと。明治時代後期から昭和にかけて活躍した落語家で、20世紀の落語界を代表する名人といわれる。
  • 注14 石田彰さん 声優、俳優、ナレーター。少年から青年まで多種多様なキャラクターを演じ分け、その独特な声質はファンから「石田ボイス」と呼ばれる。代表的なキャラクターに『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲル、『NARUTO』の我愛羅など。

取材・構成:加山竜司


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