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【インタビュー】おれが一番、手塚のすごさをわかっているっ! 『チェイサー』コージィ城倉【後編】

2014/08/04


主人公・海徳光市とコージィ城倉の共通点

――城倉先生、漫画家になるにあたって手塚治虫の影響は?

城倉 昔から好きは好きでしたよ。ただ、小さい頃は梶原一騎の全盛期でしたからねぇ。それに俺、ハタチくらいで1回マンガ読むのを卒業しちゃったところがあるから(笑)。

――それはまたどうして?

城倉 ちょうどその頃、ラブコメ・ブームが来たんだよね。マンガの絵が、どんどんアニメっぽくなっていった時代。それまでの梶原一騎的な骨太なモノを求めていたから、そのへんで一回離れちゃったんだ。

――漫画家になる前に、就職されてますよね?

城倉 そうそう、小さいデザイン事務所でグラフィック・デザイナーをやっていたの。スーパーのチラシとかポスターを作っていたんだけど、その頃にはマンガを読んでいなかったなぁ。

――そこから漫画家への道を歩んだ経緯は?

城倉 もともと子どもの頃から絵心はあったんだよね。まぁ、だからグラフィック・デザイナーになったんだけど。ただ、いつ潰れるかわからないような会社だったし、その当時マンガ雑誌を読んで「これだったら俺でも描けるんじゃねぇの?」的なのもあったんだよ。でもね、バスッっと会社を辞める勇気はないの(笑)。アシスタントをやる勇気もない、もちろんマンガのテクニックもない。だから会社に行きながら、夜帰ってきてから「やるべぇ」みたいな。机なんかなかったから、布団をバーッとひっくり返して、ベッドの板の上でマンガを描いてた。

――なかなかハードな経験ですね。

城倉 でもね、すぐに賞を取れたんだ。佳作だったから雑誌に掲載する予定がなかったのに、とある作家が原稿を落として、その代原(代理原稿)として雑誌に載ったの。だから描き始めて2カ月後くらいには、もう雑誌に載った。それで「これはイケルかな」と思ったんだよね。

――では、アシスタント経験もゼロ?

城倉 ないです。なかなか雑誌に載せてもらえなかったら、「プロの壁は厚いなぁ」って 思ったかもしれない。「案外、受け入れてくれるんだな」っていうのを最初に感じて、あ とはもう体育会系で培った根性ですよ。ボツをなんべん食らってもまた持ち込みにいく。その根性は人一倍あったと思います。

――体育会系?

城倉 うん、もともと野球部だったからね。苦しい時に、まだ何時間も同じことをしなきゃいけない……という状況を根性で乗りきってきた。そういうことはムチャクチャあって、それは部活で鍛えられた根性だと思う。やっぱりね、うちのアシスタントとか他人の話を聞いていても思うんだけど、くじけちゃうんですよね、みんな。ダメ出しされてくじけちゃう。俺はくじけずにやっていたら、ある時「じゃあ連載を始めますか」と言われた。それで「これでもう転職できるな」と思って、そこから漫画家一本に絞ったんだ。

――その例でいくと、海徳さんもくじけないタイプですよね。

城倉 海徳さんはね、この人、けっこう才能あるんですよ。そうじゃないと手塚治虫に挑戦できないからね。ある程度は自分もノシ上がっていかないと、話にならない。四畳半で描いているだけだと、手塚治虫は視野に入ってこない。海徳さんは、そこそこ成功していくと思うんですよ。ただ、才能は中途半端なんです。それは俺と同じ。海徳さんと俺は才能が中途半端で、天才を見ては「あいつスッゲーなぁ」って思うタイプ。

手塚治虫の生原稿に思わず賞賛の言葉を並べてしまう海徳。本物の天才が持つパワーを感じることのできる名シーン。

手塚治虫の生原稿に思わず賞賛の言葉を並べてしまう海徳。本物の天才が持つパワーを感じることのできる名シーン。


――城倉先生がいろいろなジャンルを描くのは、やはり手塚を意識してのことですか?

城倉 それを言うのはおこがましいんだけど、ほんと若干、それはあるんです。本当はいろいろできるわけじゃないんだけど、ちょっとでも手塚治虫に近づくために、思いっきり背伸びして、多岐に渡ってたくさん描いてみようかな、と。それは本当におこがましすぎて、あんまり言いたくないんだけどね。

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