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【ロングレビュー】『ポーの一族 ~春の夢~』(萩尾望都) 40年ぶりに帰ってきた名作! 最新作には、今まで語られなかった秘密が……!?

2017/09/19


弱っているアランを回復させるために訪れた、同族ながらエドガーとは血筋の異なるファルカの登場。また、エドガーが一族の者に会い“気(エナジー)”をわけるなど、これまでに描かれていない吸血鬼の秘密、一族の内幕に抵触する場面が多くある。

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ドイツ語を口にすることすらタブーである世情。故郷を思うブランカは、シューベルトの歌曲「冬の旅」のレコードをかけていたエドガーの部屋を訪れ、親しくなっていく。


説明的な文章やセリフを排した萩尾のマンガ作法は、物語の世界を体感し、読者が個々に行間を読みとり、解釈する喜びに満ちている。そもそも『ポーの一族』シリーズは当初からあえて時系列がバラバラに発表されているので、1話ごとに味わうとともに、読み手が脳内で時系列を並べ直して想像を広げるのも楽しみどころ。ちなみに、すでに本編では、『春の夢』よりあとの年代の話も描かれているわけで……そこで起こった事件を思い起こすとまた切なさが倍増する。とはいえ、新しい読者がこの『春の夢』でエドガーとアランに出会い、40年前に発表された『ポーの一族』を読むとしたら、それも至上の体験に違いない。

うれしいことに、さらなる新エピソードが来春から「月刊flowers」誌上で連載されることが発表されている。『ポーの一族』全編をしっかり読みかえして待つことにしよう!

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アランには秘密で、ひとりで一族の女性・クロエに会いに出かけたエドガー。エドガーはこうしてたびたび“務め”を果たしており……。




<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。
ブログ「ド少女文庫」

単行本情報

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