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【連載企画】中島かずきの「このマンガもすごい!」 <最終回>『マンガの歴史』

2017/10/25


日夜、注目のマンガを紹介する「このマンガがすごい!WEB」。そんななかで、いつものレビューと違う特別なレビューが……!!!?

ということで、読者の皆さんから大変な注目を集めている連載企画、中島かずきの「このマンガもすごい!」

脚本家・小説家・漫画原作者として知られる、あの中島かずきさんによる、「このマンガがすごい!WEB」だからこそ可能な、マンガコラム企画の連載!
今回で本連載も、ついに最終回!! 最後を飾るのは、いったい!?

中島かずきさんといえば、劇団☆新感線の座付き作家としての活動を筆頭に、アニメ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』のシリーズ構成や、TVシリーズ『仮面ライダーフォーゼ』のメイン脚本など、マルチな活躍を続ける当代随一のクリエイター! 本WEBサイトの読者の皆さんも、くり返し観た中島さんの作品は多いのでは!?
そんな中島さんが注目する、新旧マンガ作品について、アレやコレやと語り尽くす本企画! その作品、そして、クリエイターならではの視線とは……!?

今回「すごい!」のは……このマンガだ!!


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『岩崎調べる学習新書 マンガの歴史』 第1巻
岩崎書店 みなもと太郎 ¥1,000+税


最終回の作品は、日本マンガ史を総ざらいする意欲作『マンガの歴史』!!!
過去の名作マンガについてもたびたび言及してきた、本連載の最後を飾るにふさわしい1冊です。本作は、マンガ作品ではないのですが、著者は50年を経ていまだに現役を誇る、超ベテラン漫画家・みなもと太郎。中島さんはみなもと太郎作品についても、多くの思い出があるようで……?


みなもと太郎氏の『マンガの歴史』が出た。
中高生向けに日本のマンガの歴史を語るという企画だが、これほどふさわしい人はいないと思う。

漫画家としては、70年代の『週刊少年マガジン』に『ホモホモ7』を連載して、当時の小学生たちに衝撃を与えた。

現在気軽に手にすることのできる、完全版『ホモホモ7』の表紙。 いかにもギャグマンガテイストなタッチで描かれているが……?

現在気軽に手にすることのできる、完全版『ホモホモ7』の表紙。
いかにもギャグマンガテイストなタッチで描かれているが……?

主人公を含めた男性キャラは描線の少ないギャグマンガのキャラクター、でも女性は丁寧に描かれたかわいい少女マンガ調と、ひとつの作品のなかでタッチの違うキャラを使い分け、しかもギャグキャラの男性でさえ時折劇画調の顔になる。当時はまだ描きこみの多い劇画タッチの作品とシンプルな絵のギャグマンガとははっきりと境界があった。その境界を軽々と飛び越えて絵のタッチを変えるというのは、かなり新しかったのだ。

そのあとの仕事で印象深いのは、『レ・ミゼラブル』や『モンテ・クリスト伯』。古典的名作、しかも大長編を、単行本1冊程度の分量でまとめてしまう。ギャグマンガのキャラで描くことで、ダイジェストながらそんなに違和感なく読めてしまう。その構成力のすばらしさ。

そして今に続く『風雲児たち』という大長編。

『風雲児たち』の連載開始は、驚きの1979年!! 『風雲児たち 幕末編』として、現在でも連載中の超長寿作品となっているのだ!!

『風雲児たち』の連載開始は、驚きの1979年!!
『風雲児たち 幕末編』として、現在でも連載中の超長寿作品となっているのだ!!

2018年の正月ドラマで、このなかの杉田玄白・前野良沢パートを三谷幸喜氏がドラマ化するので話題になったが、これで日本史のおもしろみを知った人間が何人いるだろう。

早くから商業誌デビューをしているが、それだけではない。
もともと作画グループという、マンガ同人誌活動の草分けのグループのメンバーだったり、50歳からコミケに参加したりと、ファン活動も筋金入りだ。
プロとしてファンとして長く活動してきたから、マンガ界の移り変わりに対しても、目撃者としてと、当事者としての2つの視点をあわせ持つ。
だからこそ、マンガの歴史を俯瞰的に語るのには、じつにふさわしい人だと思ったし、彼のマンガ歴史観を読んでみたいとも思った。

今の商業的な展開における日本のマンガの嚆矢といえば、手塚治虫とトキワ荘中心に語られがちになる。だが、それだけではないのは70年代の劇画ブームを体験したものなら身をもって知っているだろう。
みなもと氏は、そのへんの事情も丁寧に語っていく。

名作・『巨人の星』は、現在ではKindle版の劇画チックな表紙を目にすることが多い。 「劇画」を少年マンガ誌に持ちこんだ同作は、まさに革命的な作品だった。

名作・『巨人の星』は、現在ではKindle版の劇画チックな表紙を目にすることが多い。
「劇画」を少年マンガ誌に持ちこんだ同作は、まさに革命的な作品だった。

70年代の劇画ブーム、『週刊少年マガジン』が『巨人の星』の大ヒットを背景に100万部を超えるあたりでこの巻は終わる。このあと80年代にさしかかると、24年組による少女マンガの革新、大友克洋の登場など、また大きくマンガのパラダイムが変わるのだが、そのへんをどう語るのか、続刊が楽しみだ。


前回に引き続き、マンガの「歴史」についてフォーカスするものだった最終回のレビュー。ところで、今回のレビューのなかには、第1~6回のなかで言及されていたキーワードが散りばめられていたことに気がつきましたか? 過去のレビュー記事とあわせて確認することで、今回のレビューをいっそう深く楽しむことができるかも?

ということで、公開中の【連載企画】中島かずきの「このマンガもすごい!」をもう一度チェック!!

<第1回>大月悠祐子『ど根性ガエルの娘』
<第2回>関川夏央/谷口ジロー『「坊っちゃん」の時代』
<第3回>竹宮惠子『少年の名はジルベール』
<第4回>水樹和佳子『樹魔・伝説』
<第5回>諸星大二郎『暗黒神話』
<第6回>『週刊少年ジャンプ』

……今回で、中島さんのレビューは終わってしまう! しかし!?

いつかは連載は終わるもの……しかし、もっと中島さんのマンガ話を聞きたい!! 中島さんを形づくったマンガのことを知りたい!!
そんなあなたに朗報! ……じつは、中島さんのマンガに関するエッセイをまとめた書籍が発行される!?
これは……期待大!! 続報を待て!!!

単行本情報

  • 『岩崎調べる学習新書 マンガ… Amazonで購入

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