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『銀河の死なない子供たちへ』(施川ユウキ)ロングレビュー! かぎりない時を生きる姉弟が見る、かぎりある生命の物語――終末を迎えた世界に刻まれるライムは、どこに届く?

2017/11/11


話題の“あの”マンガの魅力を、作中カットとともにたっぷり紹介するロングレビュー。ときには漫画家ご本人からのコメントも!

今回紹介するのは『銀河の死なない子供たちへ』

『銀河の死なない子供たちへ』著者の施川ユウキ先生から、コメントをいただきました!

著者:施川ユウキ

取り上げていただき光栄です。
今作は、人類が滅んだずっと先の未来を舞台に、無限の時間を生きる子どもたちが活躍します。壮大で謎だらけですが、さくさくページをめくれる読みやすい内容になっていると思います。自分の漫画家人生のなかでも、かなり挑戦的な作品になっているので、読んでいただければうれしいです。


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『銀河の死なない子供たちへ』 上
施川ユウキ KADOKAWA ¥570+税
(2017年9月27日発売)


とっくの昔に人類が絶滅した星。
ラップを口ずさむのが好きな天真爛漫な姉のπ(パイ)と、読書好きで思索にふける弟のマッキの2人の姉弟。
『バーナード嬢曰く。』などで知られる施川ユウキの最新作。
『オンノジ』『ヨルとネル』に連なる、終末的な世界観の作品。
ただし、4コマ形式だった前2作とは異なり、初のストーリー形式のマンガになっている。
『オンノジ』ではフラミンゴの姿になった少年オンノジと少女ミヤコの2人だけが無人の世界に閉じこめられ、『ヨルとネル』では"こびと"となって世界から切り離された2人の少年の逃走劇が描かれた。
『銀河の死なない子供たちへ』では、死なない子どもである姉弟の永遠の日常が描かれる。


悠久の時を思う時、人は星を見上げる……。「銀河の」というタイトルからして、壮大な物語が予見されるというものだ。

悠久の時を思う時、人は星を見上げる……。「銀河の」というタイトルからして、壮大な物語が予見されるというものだ。

唐突ながら海外ドラマ『フリンジ』はご存じか。
超科学的な出来事に対応する特殊チームを描いたドラマで、毎回物語の導入部分で必ず事件が起こり、そのツカみがメチャクチャうまいのだ。
さまざまな超科学的現象による被害が、「これ以上はない!」と考え抜かれたシチュエーションでスピーディーに発生し、たちまち物語に引きこまれる。
この『フリンジ』の導入部分だけを集めたビデオが欲しい旨の発言を、以前施川ユウキがしていたと記憶している。
『フリンジ』の"ツカみ力"にヤラれていた自分もこの意見に深く頷いたのだが、『銀河の死なない子供たち』の"ツカみ力"もかなり強烈だ。

降るような満天の星空の下、まだ幼い少女が草むらにひとり立っている。
片手に持った動物の骨をマイクがわりに、突然ライムを刻む少女。
道を歩く少女は棒を見つけ、地面の上に円周率を書きだしていく。
途切れることなく描かれた数字が地面を覆い隠すほどに埋め尽くし、かたわらの廃車の下に若葉が芽生えているのに気づく。
道に寝ころび、空を見あげる少女。
少女の周囲が朝となり夜となり、雨が降り雪が積もり、火山が噴火しバイソンに踏みつけられる。
気づけば先ほどの若葉は大木へと育ち、天に掲げるように車を樹上に持ちあげていた。


車の下で見つけた芽が、いつしか大木へ。天候の変化など、数ページにわたって時間の経過を演出。その表現力は圧巻だ。

車の下で見つけた芽が、いつしか大木へ。天候の変化など、数ページにわたって時間の経過を演出。その表現力は圧巻だ。


数百年、数千年という時間の流れを、連続する数コマに圧縮して表現するなど、マンガの情報伝達力を活かしたコマ運びに圧倒される。
しかもこれは導入部分の途中。まだ作品タイトルすら提示されていないのだ。
長い長いアバンタイトル。導入部分で一気呵成に主人公の特異なキャラクター性が語られる。
月日を経ても、天変地異に巻き込まれても、大型動物に捕食されようとも少女は死なない。
目まぐるしく流れていく時間のなかで、少女と少女の頭上に輝く星の光だけは変わらない。
星空を向いて「星めぐりの歌」を歌う少女。
そしてこの物語のタイトルが、ここでようやく提示される。


単行本情報

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