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『軍靴のバルツァー』(中島三千恒)ロングレビュー! 軍事大国から小国に派遣されたエリート軍人の奮闘を描く【総力リコメンド】

2014/12/08


ヴァイセン式鉄道の導入。線路幅が違う敵国・エルツライヒは利用できず、独占が可能だ!

ヴァイセン式鉄道の導入。線路幅が違う敵国・エルツライヒは利用できず、独占が可能だ!

始まりは新旧世代の対立から! 軍事的後進国バーゼルラントの軍事サイドと、バルツァーら先進国の知識がかみあわない。こうした新旧世代の対決は技術面だけに留まらず、新しい文化に慣れない民衆の心情など、細かい描写が随所に登場している。

つづいてバーゼルラント王族間の対立が勃発! ヴァイセンとの同盟を目指すバーゼルラント第二王子・アウグスト王子と、大叔母が女王のエルツライヒ帝国との同盟を望む第一王子のフランツ王子。2人は同盟先を巡って争うのだが……。

そして国家間の対立が先鋭化……。アウグスト王子は、折しも始まったヴァイセンとホルベック王国との戦いに、義勇兵を指揮して参戦。しかもこの戦いは、エルツライヒがホルベックと手を結んでヴァイセンを追いこむ罠だった。
さらに国家の戦いは戦争のみで終わらない。戦争終結後の講和会議で有利な条件を引き出さないと、負けたも同然なのだ。

これらの数々の対立の陰で、常に暗躍する男がいる。バルツァーの級友でヴァイセン元連隊長・リープクネヒトだ。彼は反乱をバルツァーに阻止されたのち亡命。エルツライヒ陸軍大佐の座を手に入れ、さらにバーゼルラントへ派遣されてフランツ王子の側近となっていた。
そう、本作のもうひとつの対立はかつての友との対決だ。すべての対立の影に彼の姿があるが、その望みとは一体……?

バルツァーの密告も計算のうちと言う。どうやらバルツァーを憎んではいないようだが……

バルツァーの密告も計算のうちと言う。どうやらバルツァーを憎んではいないようだが……

これら複雑な対立の積み重ねこそ、この作品が19世紀の総力戦へと歩み出す世界観を表すことに成功した要因だろう。まるでプロイセンの軍人・クラウゼヴィッツが19世紀に記した『戦争論』の、現実の戦争は政策の継続にすぎないという概念をマンガで読んだ気になるほどだ。これだけの舞台装置がこの壮大な物語にリアリティを与えているのだ。

もちろん、男装の騎士(実は女子)のヘルムートや、兵器オタクで実業家の御曹司・ディーター、ディーターのツッコミ役ながら隠れた才能を持つパウル、射撃の腕がすごいマルセルなど、個性豊かな生徒たちもまた魅力だ。バルツァーをけなげに慕う彼らとの関係もまた見逃せない。

ミリタリマンガとしても、時代マンガとしても面白さあふれる本作。情報量が多く、読みごたえのある、大作であることは間違いない。スケールの大きな作品を求める人には、ぜひ読んでもらいたい!

特別掲載『軍靴のバルツァー』! 現在、第1巻を無料公開中!!

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<文・沼田理(東京03製作)>
マンガにアニメ、ゲームやミリタリー系などサブカルネタを中心に、趣味と実益を兼ねた業務を行う編集ライター。

中島三千恒先生のインタビューは12月9日公開予定!

インタビューを終えた中島三千恒先生から、コメントをいただきました!

著者:中島三千恒

気さくで親しみやすい雰囲気のなかでお話できたこともあり、
少し喋りすぎてしまったなと反省中です。
でも、とても楽しいインタビューでした。
三国志の話とかもっとしたかったです!
インタビュー前編は12月9日更新予定!


単行本情報

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