2013年まで朝日新聞社より発行された少女向けマンガ雑誌『ネムキ』に、2007年から2011年までに掲載されたショートコミックから21篇を収録している本作。『ネムキ』は現在、誌名を『Nemuki+』と変え朝日新聞出版より発行されている。未知庵の連載も継続中。
収録されているのはそれぞれ8ページほどのショートストーリーが中心なのだが、イヌを飼いたいと切実に願う少年がなぜか特大カエルをペットにしてしまう「カエル」と、ネコがセラピストとなって心の病に悩む人々を救済（？）する「先生」というエピソードの2本は続編も収められている。

「素敵な彼氏と海でキャッキャッしたい」と手をあわせる少女の願いをお地蔵様自らが叶える!?　お前に頼んだけどそういうことじゃねぇよ！

家族をめぐるカエルと少年の抗争やネコ先生の恋など、続編だけでも成立する展開で、ここにも作者の並々ならぬ匠の技を感じるのでは？

また、読者を置いてけぼりにするかのようなシュールなギャグセンスに隠れて見逃されがちなのが、描く女の子が美しいということ。
「ネムキ」の前身となる「眠れぬ夜の奇妙な話」や、その母体となる「月刊ハロウィン」で伊藤潤二や高橋葉介といった美少女も描けるホラー漫画家を輩出したように、今は未知庵という新しい才能を得た「ネムキ」（現・「Nemuki＋」）。その今後の活躍にも目を投じ続けていたい。

拾った財布にみっちりつまっていたのは札束ではなく精霊…いや、オッサン!?　金の価値を知らない少年との衝撃のラストは、なんだか泣ける。

『未知庵の1 三時のお水』著者の未知庵先生から、コメントをいただきました！

著者：未知庵

初めての単行本でうれしい反面、いろいろと心配もあったのですが、こうして本を取り上げていただいてとてもありがたく思っております。

これからもがんばりますので、生温かく見守っていただけるとありがたく存じます。

＜文・富士見大＞
編集プロダクション・コンテンツボックスの座付きライター。『衝撃ゴウライガン！！兆全集』（廣済堂出版）、『THE NEXT GENERATION パトレイバー』劇場用パンフレット、平成25年度「日本特撮に関する調査報告」ほかに参加する。