アゲ太郎にクラブの楽しさを伝授する忍堀さん（しぶかつ出入りのおしぼり業者）にレコ屋「Digger's」店主の溝黒さん、師匠のDJオイリー、ライバルのDJ屋敷蔵人、そして宇田川町商店街の幼なじみチーム……といったアゲ太郎を取り巻く人物も、『キン肉マン』ばりのキャラ立ち。
それぞれクセはあれど愛すべきマインドの持ち主で、イヤなヤツはひとりも出てこないのも、爽やかな読後感のヒミツだ。

「豚をアゲるか客をアゲるかに大したちがいはねぇ!!」といったヘリクツが、説得力に満ちた熱いグルーヴとなり読者のココロを突き動かしてくる。

斜めカーブな作品かと思わせて、夢、情熱、努力、勝利、成長、恋、友情、家族……といった「ジャンプ＝王道少年マンガ」の直球テーマを、真正面からキッチリ打ちにいってるあたりも、好感度大。

これって……。もはやジャンルとかテーマとか関係ねえ。この破壊力にマンガのなんたるかを見る思い!?

作者の2人は、本作が初の連載作品。色眼鏡のないフラットな目線でクラブカルチャーの魅力を少年読者にもわかるようにポップに描きつつ、唯一無比のミラクルな味わいを生み出していて、心から素直に応援したい気持ちになってくる。

「みんなクラブでなにするの？」「DJはあそこでなにをしてるの？」なんてピュア極まりない質問に、実在DJのYummyがわかりやすく回答するクラブカルチャー入門コラム「おしえて！ヤミー先生」も、初々しく楽しい。

好きなことに夢中になることの尊さ、プロの仕事の厳しさ、それらを両立することの困難さと楽しさ……。そんな大人も（だからこそ）つい忘れがちなコトを教えてくれる、最高の一冊。

ぜひ、『サイタマノラッパー』の入江悠監督あたりで映画化希望！

『とんかつDJアゲ太郎』著者のイーピャオ先生＆小山ゆうじろう先生から、コメントをいただきました！

原案：イーピャオ

取り上げていただき、ありがとうございます！！
原案担当としてムダに力を入れているのは、キャラの人物名！
そして、目下ものすごい早さで変わりゆく渋谷の街の空気感を
少しでも取り入れたいな～と思っています。
もちろん、とんかつも、DJも、がんばって取材します！

漫画：小山ゆうじろう

とてもとても熱い読者のみなさまのお陰で、このようにマンガ評をいただけて、大興奮＆みなさまに大感謝です。これからも「バカだねえ?」と言われるマンガを書き続けられるように、体に気をつけてがんばります！

＜文・井口啓子＞
ライター。月刊「ミーツリージョナル」（京阪神エルマガジン社）にて「おんな漫遊記」連載中。「音楽マンガガイドブック」（DU BOOKS）寄稿、リトルマガジン「上村一夫 愛の世界」編集発行。
Twitter:@superpop69