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『ヴォイニッチホテル』(道満晴明)ロングレビュー! 血ミドロなのにほのぼので、明るいのにドス暗い――ついに幕をおろした……悲劇? いや喜劇?

2015/07/08


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リアリティレベルすらも大きく異なる雑多な面々が、妙な生活感(一例を挙げるならば、かわいらしいメイドの魔女が、裏では汚れ放題の部屋でネットゲームをしながら悪態をついているような)を備えたまま、ひとつの作品の内部で違和感なく共存してしまう……。

そんな破天荒な世界観からは、日常と非日常の融合した世界を描きだす、マジックリアリズム/ラテンアメリカ文学の潮流が思い出されるかもしれない。

とはいえもちろん、『ヴォイニッチホテル』がラテンアメリカ文学の名作群のような難解さを抱えた作品なのかといえば、そんなことはない。

メイド服の褐色少女・エレナは、タイゾウへ笑顔を向けながら暗に三下悪魔たちをねじ伏せる、恐ろしい魔女でもある。

メイド服の褐色少女・エレナは、タイゾウへ笑顔を向けながら暗に三下悪魔たちをねじ伏せる、恐ろしい魔女でもある。

重厚な文学の表情は――あるいはグロテスクになりかねない猟奇的描写や複雑に入り組んだ物語構造さえもが――、いかにも道満晴明らしいポップでスタイリッシュな筆致とかわいらしいキャラクターたち、ブラックでシュールなギャグにより巧みに中和されていく。

エキセントリックな世界観やキャラクターをライトに味わうことができるとともに、(ときには道満晴明の他作品まで参照しながら)読みこむほどに新たな発見があり、(そのタイトルどおりに)どこまでも解読し尽くせない奥行きをもあわせ持つ。

サブエピソードも数多い。探偵団のハカセと地下に住むテネブラルムというアンバランス過ぎるカップルが愛を育む本エピソードも、その結末まで絶対に見逃せない。

サブエピソードも数多い。探偵団のハカセと地下に住むテネブラルムというアンバランス過ぎるカップルが愛を育む本エピソードも、その結末まで絶対に見逃せない。

『ヴォイニッチホテル』とはいわば、マジックリアリズムとキャラクター表現/マンガ表現との幸福な出会いの場、あるいはその2つの道が交差した深夜の四つ辻に立つ者なのだ。END。

JUST AFTER。マジックリアリズムの代表作、ガルシア=マルケスの『百年の孤独』が全世界で3600万部売れているのだから、『ヴォイニッチホテル』もそうなるべきだと願っても、なんらおかしなことはないだろう。


『ヴォイニッチホテル』著者の道満晴明先生から、コメントをいただきました!

著者:道満晴明

取り上げていただいてありがとうございます。
この記事でさらに多くの方に興味を
持っていただければ幸いです。



<文・高瀬司>
批評ZINE「アニメルカ」「マンガルカ」主宰。ほかアニメ・マンガ論を「ユリイカ」などに寄稿。インタビュー企画では「Drawing with Wacom」などを担当。
Twitter:@ill_critique
「アニメルカ」

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