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【ロングレビュー】「死ぬのが怖い」って言ってもイイんじゃない? 『ノストラダムス・ラブ』 冬川智子

2014/07/02


本当は寂しさを埋めるための、誰でもよかったはずの相手だったが、初めての男女交際のなかで桜は、人と交わることの楽しさに気づく。

本当は寂しさを埋めるための、誰でもよかったはずの相手だったが、初めての男女交際のなかで桜は、人と交わることの楽しさに気づく。


主人公は極端に自己中心的な性格ではない。しかし、「人畜無害」を装った態度の中にある傲慢さを見せられて、ハッと自分を振り返らずにいられなくなる。なんら希望を持たずに生きるのだって、その人の勝手といえばそう。いや、だけど「当たりさわりなく生きてる(つもり)」って、やっぱり不誠実だ。喜びや悲しみを感じる感情というものを、唯一持って生まれた人間としては。

森君と一緒にいても「いつかは無になる」という漠然とした恐怖に押しつぶされそうになる桜。思いが声となって彼女の口からあふれ出す。

森君と一緒にいても「いつかは無になる」という漠然とした恐怖に押しつぶされそうになる桜。思いが声となって彼女の口からあふれ出す。


いつかすべてがなくなることを知りながらも、明日を信じて生きるのが人間なのだ。そんなことを考えさせられる本書の読後感は、ちょっとディケンズの『クリスマス・キャロル』に似ている。

「死ぬことなんか怖くない」という心境に至るのは難しい。とはいえ、死や老いの存在を忘れて生きるのも、ある意味不健全ではないか。ものすごく怖くなっちゃったら、ひとりで抱えていないで近くの人に話せばいいのだ。「死ぬのが、怖い」って。



『ノストラダムス・ラブ』著者の冬川智子先生から、コメントをいただきました!

著者:冬川智子

ご紹介いただきありがとうございます!

読んでくださった方それぞれにいろんな受け取り方をしてほしくて、この本にはあとがきを入れていません。

どんな形でもいいので心に残る作品になっていたらいいなと思います。


<文・粟生こずえ>
雑食系編集者&ライター。高円寺「円盤」にて読書推進トークイベント「四度の飯と本が好き」不定期開催中。 ブログ「ド少女文庫」 


単行本情報

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