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『蒼の六郷』(あさりよしとお)ロングレビュー! 「どうしてお尻を触るの!? 操縦できないよぉ!!」夢いっぱいの少年と欲まみれのJKが織りなす海洋大冒険!?

2016/09/28


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そして航海のなか、ついに2人の前に現れる海底帝国の尖兵、ダイオウイカ……はどう見てもオオダコ。
じつはタコに恐怖する真潮は、潜水艦を与えてくれた「ある存在」から、タコをダイオウイカだとウソを教えられていたのだ。恐怖で顔を覆う少年に、昴は彼の股間を触り始め……!?

気になる方はぜひ本編で確認してほしいが、どう見てもショタです、ありがとうございました。
連載誌が成年女性向けの「楽園」だったおかげで、ノーブレーキでお送りしています。

第二次性徴も未発達だろう真潮に密着して興奮をおさえきれないのは昴のほう!?

第二次性徴も未発達だろう真潮に密着して興奮をおさえきれないのは昴のほう!?

さあ征くぞ! 海底2万ミリメートル(つまり水深20メートル)。
……と、息巻くものの、昴が真潮の耳に吐息を吹きかけたりセクハラをする事情もあるが、この潜水艦は遠くに航海できるよう造られていない。
艦内にトイレもない、狭いのでキッチンもない、七輪を持ちこんだら温度がヤバイことに……。
下世話な話に寄せてギャグっぽくしているが、潜水艦の居住性や航海に必要な「物資」の問題をコンパクトにまとめた「海洋冒険ドラマ」であり「極限環境(?)SF」も成立しているのが、さすがのあさりよしとおマンガだ。

この真潮と昴の2人がクルーに選ばれた理由、それは「秘密が漏れる心配がない」からだ。口が固いんじゃなく、秘密を漏らしても相手にされないタイプ。
真潮の親は何カ月も息子の顔を見たことがないというし、相棒になった昴も学校ではイジメられ、部活もやってなくて友だちが少ないどころかひとりもいない。

「冒険」は家庭に恵まれている人にとってはとても難しい。ふらりといなくなれば家族が心配して、警察に捜索願いを出すだろう。孤立したはぐれ者たちがひとつ屋根の下に暮らし、冷たい本物の家族よりも擬似家族――とは『カールビンソン』以来のあさりのテーマかもしれない。
「海底帝国」の正体は、カンのいい人なら序盤で気づくはずだ。同じようなオーバーテクノロジーを持つ存在がそうそうあるはずないもの、つまり敵も味方ももとをたどれば……。

巨大タコと戦い続けていた名もなき少女を“仲間”にして、物語はいよいよ核心に迫る!?

巨大タコと戦い続けていた名もなき少女を“仲間”にして、物語はいよいよ核心に迫る!?

自分たちだけで管理できない巨大メカを運用するために「現地人」を利用するのは侵略SFの定番だが、居場所がない真潮や昴たちには「救い」でもある。
結末もハッピーエンドのようで、その後の地球はとてつもない騒ぎになっているはずで、「幸せそうな奴らに一矢報いてやったぜ」と暗い悦びが胸に湧きあがる。

クライマックスで「舞台」となる東京の“ある場所”を破壊するという点では、『シン・ゴジラ』よりも踏みこんでいる箇所もあり。
大田区は最近、創作的にいろいろなイベントがあってうらやましいかぎりです!

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<文・多根清史>
『オトナアニメ』(洋泉社)スーパーバイザー/フリーライター。著書に『ガンダムがわかれば世界がわかる』(宝島社)『教養としてのゲーム史』(筑摩書房)、共著に『超クソゲー3』『超ファミコン』(ともに太田出版)など。

単行本情報

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