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【ロングレビュー】冷酷無比な(はずの)悪の参謀が、“薄幸”魔法少女に一目ボレ。『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』第1巻 藤原ここあ

2014/09/03


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差し入れを与えることで白夜への好意を表現しながらも、ミラは自身の気持ちを理解してもらいたいとか、あわよくば踏み込んだ関係に、などという下心は薄く、ひとり相撲の純愛を続ける。
この構造は恋愛というより「萌え」や「熱心なファン」の行動に近い。怜悧冷徹な悪の参謀のはずが、戦うべき相手をより深く知れば知るほど庇護欲をそそられ、すっかり戦意喪失を起こしてしまっている。

どことなく、数年前、蔑称として使われたはずの「日本鬼子」が、角が生えた萌えキャラとして擬人化され、日本へ向けられた悪意がうやむやになった、との件を思い出ださせる。
(そういえば『妖狐×僕SS』の白鬼院凜々蝶もかわいらしい鬼娘であった。)

 個性豊かな悪の組織の面々が勢ぞろい。このうち、子犬っぽい素直キャラ・フォーマルハウトがミラの補佐につくのだが……。

個性豊かな悪の組織の面々が勢ぞろい。このうち、子犬っぽい素直キャラ・フォーマルハウトがミラの補佐につくのだが……。


2人の不可解な関係性は、さすがに組織から危険視され、同僚のフォーマルハウトが魔法少女討伐を補佐することになり、ミラも遊びは終わりと決意する。しかし、あっさりと単純なフォーマルハウトの目を欺きつつ邪魔な彼を「消す」方向に傾く。さらに、フォーマルハウトもまた白夜と仲良くなりつつあることで、ミラの心配の種が増えてしまう。

 組織に捕えられた白夜を見て、お約束の眼鏡割りを起こすミラ。監視カメラに見張られ、双方のピンチ! お色気シーンにも品がある。

組織に捕えられた白夜を見て、お約束の眼鏡割りを起こすミラ。監視カメラに見張られ、双方のピンチ! お色気シーンにも品がある。


個人対個人として触れ合えばわかり合えるはずなのに、置かれた立場だけで敵対していることの無意味さ。ゆるゆるな萌えるラブコメディのなかに、そんなメッセージがさりげなく隠れているかのようだ。

このまったり感を楽しんでいたいが、妖怪の先祖返りたちの和気あいあいとした同居コメディから、シリアスな急展開を遂げた『妖孤×僕SS』の作者の手の内は、まだ見えていないようにも感じる。1巻ラストに突如として登場した「鳥」や、個性豊かな悪の幹部たちがどう出るかなど、まだ油断はできなさそうだ。


『かつて魔法少女と悪は敵対していた。』著者の藤原ここあ先生から、コメントをいただきました!

著者:藤原ここあ

「このマンガがすごい!」さんにロングレビューを書いていただけるとのことで、とてもありがたく光栄に感じております!

『まほあく』は前作の『いぬぼく』とのノリの違いにギャップを感じる読者さんもいらっしゃるようですが、『まほあく』は『まほあく』らしいノリで、ゆるくほのぼのと平和にふたりの敵対関係を描いていけたらと思います。

よろしくお願い致します、ありがとうございました!



<文・和智永 妙>
ライターたまに編集。『このマンガがすごい!』以外に、「マンガナビ」公認ナビゲーター、ほかアニメ記事など書いています。



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