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【連載企画】中島かずきの「このマンガもすごい!」 <第1回>大月悠祐子『ど根性ガエルの娘』

2017/02/27


日夜、注目のマンガを紹介する「このマンガがすごい!WEB」。いったい今回は、何のマンガが紹介されているのか……と、思ったら。
このレビューは……いつものレビューとは何かが違う……!!!?

なんと本日より、脚本家・小説家・漫画原作者として知られる中島かずきさんによる、マンガレビューエッセイが連載開始!!
その名も……中島かずきの「このマンガもすごい!」!!

中島かずきさんといえば、劇団☆新感線の座付き作家としての活動を筆頭に、アニメ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』のシリーズ構成や、TVシリーズ『仮面ライダーフォーゼ』のメイン脚本など、マルチな活躍を続ける当代随一のクリエイター! 本WEBサイトの読者の皆さんも、くり返し観た中島さんの作品は多いのでは!?
そんな中島さんが注目する、新旧マンガ作品について、アレやコレやと語り尽くす本企画! その作品、そして、クリエイターならではの視線とは……!?
超注目の新連載、ここに開幕です!!

レビュアー:中島かずき

1959年8月19日生まれ。福岡県出身。

1985年、劇団☆新感線に座付き作家として参加。以降、出版社勤務を続けながら、脚本家・小説家・マンガ原作者として活躍。
2010年に勤務していた出版社を退職し、フリーとなる。

代表作に、舞台『髑髏城の七人』『阿修羅城の瞳』『五右衛門ロック』、TVシリーズ『仮面ライダーフォーゼ』、アニメ『天元突破グレンラガン』『キルラキル』など。

現在、劇団☆新感線『髑髏城の七人』が、3月30日より「花・鳥・風・月」の4シーズンに分けて1年3カ月に渡り豪華キャストでロングラン公演中。

今回「すごい!」のは……このマンガだ!!


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『ど根性ガエルの娘』 第1巻
大月悠祐子 白泉社 ¥600+税
(2017年2月17日発売)


第1回の作品は、単行本第1巻が「このマンガがすごい!2017」の第15位にランクイン、その後の展開がネットでも大きな話題となった『ど根性ガエルの娘』!
ヤングアニマルコミックス版第1巻、第2巻も発売される注目作品、中島さんはどう読んだのか!?


『ど根性ガエルの娘』は、そのタイトル通り、かつて大人気だったギャグマンガ『ど根性ガエル』の作者・吉沢やすみの娘である大月悠祐子が、父と家族の関係を描いたマンガだ。今は「ヤングアニマルDensi」というWebサイトで連載されている。
大ヒットを飛ばしながらもそれに続く作品が描けず、失踪しギャンブルに走り貯金を使い果たし子供の金を奪う父吉沢と、それにふりまわされる家族の姿が描かれる。

名作『ど根性ガエル』の重圧に潰されてしまう著者の父・吉沢やすみ……。

名作『ど根性ガエル』の重圧に潰されてしまう著者の父・吉沢やすみ……。

正直かなりえぐいエピソードが多いが、絵柄が可愛いのと、現在は良好な関係が築けているというエピソードがはさまれるので、「ああ、あの頃は大変だったが今は大丈夫という、いい話なんだな」という気持ちで読んでいた。作者自身、第1話のラストで『一度はどん底に落ち、そして再生した父と家族の話を描こうと思う』と語っているし。

これまで作中では何度も「再生された家族の姿」が描かれてきたように思えていたが……。

これまで作中では何度も「再生された家族の姿」が描かれてきたように思えていたが……。

だが、それは第15話で一変する。第1話で、「今は大丈夫」と語られたエピソードには裏があった。作者はいわゆる“信頼できない語り手”であったことが次々に明かされていく。父親と家族の問題は未だ継続中だった。そればかりか、自分だけが「家族に存在が無いかのように扱われていた」心象までが描かれる。
感動の再生ストーリーを期待して読んでいるこちらは、その筆致に打ちのめされてしまう。第1話を読んでからこの第15話を読むと、よくできた叙述ミステリを読んだときのように、目の前で信じていた世界がひっくり返された衝撃を受けて愕然とした。最近読んだマンガの中で一番ショックを受けたと言ってもいい。
ただ、それは僕ばかりではないようで、ネットではこの話が発表された後、話題騒然としていた。実際、その反響の大きさに、それまでデジタル版しか出ていなかったコミックスが、急遽紙の本でも出版されることになったくらいだ。

今、この原稿を書いている段階ではまだ次の話は発表されていない。
ここから先どうなるのか。今は「いい話だったと思ったのに現実はそうじゃなかった」というどんでん返しのショックばかりが話題になっているように見受けられるが、それでも作者は厳しい現実を踏まえたうえで、いわゆる「いい話」に落としこまないかたちでの家族の再生を描こうとしているのではないか。
「連載を始めたときからこの回が描きたかった」と作者自身ツイッターで語っていたのは、そこまで踏み込んで、それでも先にある光明を描こうとする作家の覚悟だったのではないか。そんな気がしてならない。


【付記】

この原稿を編集部に渡した後に、第16話が更新された。
ここから先は自分たち家族のことを覚悟を持って書く、その決意表明のような回だった。どんな形であれ、その覚悟を見届けたい。そう思う。


注目の集まる「どんでん返し」だけでなく、その先にある作者への目線が、同じくクリエイターとして戦う中島さんならではだった<第1回>『ど根性ガエルの娘』。

dokonjyou

新旧織り交ぜ、様々な作品をご紹介くださるという中島さん!
次回はなんのマンガがご紹介されるのか? 乞うご期待!!

単行本情報

  • 『ど根性ガエルの娘』 第1巻 Amazonで購入
  • 『ど根性ガエルの娘』 第2巻 Amazonで購入

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